アクセサリーという名のヒモ
彼を拾ったのはちょっとヤンチャな外見がカッコ良かったから。
そう見た目ほど粗暴でもなかったし、連れ歩くアクセサリーにちょうどいいオトコだった。両親が選んだセキュリティマンションにオトコを泊めて、申し訳程度のバイト代をバイクにつぎ込むのを許容して。アタシのおごりで食事やカッコいいお洋服。時々連れだって歩くと気分が良かった。
コレってヒモ?
でも気に入ったアクセサリーは手入れが面倒ではないでしょう?
それに連れ歩くアクセサリーだし外見以外はどうでもいいと思ってたはずで、いろいろたいして期待してなくて。
たまのバイクでデートも寒いしオシャレと無縁。疲れるばかりでイマイチと思うはずなのに、「きれいだろ」そう指差されたら「きれいね」とこたえてしまう。
もちろん「疲れたからしばらくバイクデートはイヤ」って言うのは躊躇わない。彼は「えー」と不満をもらしつつ、「年内にはまたつきあってくれよ」と先の約束をしてくれる。「しかたないわね」とこたえるアタシが地味に嬉しいのに気がつかない。
「今、連れ回すいいアクセサリーくらいにしか思ってないんだろ」
そう言ってきたのはエリート風を吹かせたお坊ちゃん。
「そのアクセサリーにもアンタはなれないけどね」
そんな言葉で振っていたら彼が聞いていたのが一番の誤算。
嫌われて別れられたり、ごねられたりするのがつらいと思えるぐらいには情がつのってた。
「俺はひふみのアクセサリー?」
問われて否定はイヤだった。縋るのが悔しかった。アタシはかわいい女にはなれない。それがまたくやしい。
「そうよ。家族もお金も学歴もないひかるはアタシにとってのアクセサリーよ。連れて歩くにはその三つはノーカンにできるもの」
自分のかわいくなさにひっそり泣きそうだった。
もちろん悔しいから泣いたりしない。
酷いことを言った自覚はあったから。
なのに、ひかるはちょっと黙ってから、嬉しそうに笑った。
「俺がひふみを彩るひふみのアクセサリーなら、ひふみも俺のだよな!」
アタシにはちょっとどう反応していいかわからなかった。アクセサリー扱いされたら怒らない?
「そう、なのか、な」
自信なく、それでも肯定したらひかるは嬉しそうだった。
嬉しそうな笑顔をかわいいだなんてほだされたアタシが安っぽくてウンザリする。
なのにどうしてか心地好かったの。