不向き
たまに会っていたいとこ達が曽祖父の葬儀を機にこちらで過ごす話が進んだ。
それまで最年少として扱われていた俺は弟分の存在が嬉しくてたまらなかった。ほら、たまに来るだけのいとことよく会ういとこじゃやっぱりお客様ぽさとか身内ぽさとか違うしさ。
妹分に関しては兄貴や兄貴分達も競争するように可愛がっていてあの競争に割り込むのは無理だった。なにせ、家系に女児は少ないのだ。女児というだけでもうかわいい。うちのお姫様だ。
お姫様はおっとりとしていてヒステリックに叫ぶようなこともなく、わけのわからないワガママを強く強いてくることもないという天使のような少女だった。ノアもかわいいのだけど、ほんの少し異質な感じがして距離を置いてしまう。
「だって、何か欲しいって要求する前ににいちゃん達が準備して贈っちまうんだから印象的には無欲に見えるといってもかわいいのには変わらないんだ」
物を贈ればにっこりと「ありがと。兄さま」って言ってもらえるんだぞ!?
嬉しいだろうが!
冷たい眼差しに少し怯む。
初対面とかで理不尽な悪意をむけた自覚はあるので自業自得だけどキツい。だって、弟分が俺より懐いてんの悔しいじゃないか!
コレ言ったらレンにまでため息つかれたんだが、ひどいと思うぞ。
ミアはかわいいって讃美してたらレンと奴に微妙な表情をされた。
「ミアは天使じゃないよ」
んー。
「妖精?」
残念なものを見るような目で見られたのはわかるぞ!
ミアはお姫様で天使で妖精だぞ!
「そのイメージに応えようとしていたとしたら、ミアも苦しいだろうな」
ため息とともにこぼされた言葉に動きが止まる。
「わからない? イメージから外れた時に排斥されるかもしれないっていうトラウマ、かな。リューイやリョーイにも少しあるけど、ミアも持ってるんだと思ってる」
「排斥ってなんだよ!」
そんなことするはずもない。
「……さぁね」
会話が成り立ちにくい原因は俺がとりつづけていた態度も悪いとわかっている。
「ミアの印象は確かに揺らいでいるかな」
レンがそんなことを言う。
「たぶん、ノアとリューイはミアの不自然に気がついていて、リョーイは、受け入れてあいつの場合、排斥するのは私だろうな。多少スタンに気兼ねするかもしれないが決めたら頑固だからなぁ」
レンが言うようにリョーイは確かにそういう部分がある。
でも。
「リューイは兄弟以外は容赦なく排斥するぞ?」
「身内にも許容段階つけて切り捨て判断するね」
かわいい弟分だからこそ、そういう部分も受け入れていけるんだが友人が騙されるのはいただけない。
レンがいきなり意見の合った俺らを苦笑いでみた。おう。俺も驚いた。
そうか。
ミアにもそんな要素があるってことか。
ミアは天使で妖精でお姫様。そんな俺ら家族の期待を裏切らない。
ほんの少しワガママに小悪魔ちっくなふるまいだって、それが俺らを喜ばせるためと知ってのふるまいだとしたら。
それは、息苦しいんじゃないだろうか。
「スタン?」
「ミアはミアなのにな」
きっとどんなところを見ても俺にとってはかわいい妹分であることに変わらない。
「余計な行動はしないようにな」
にこりと静かに笑ったレンが言う。
「余計な行動ってなんだよ!?」
そっちもしみじみ頷いてんじゃねぇよ!