伝えたい言葉
温室で見つけたミアはつば広の帽子をかぶりシンプルなワンピースに肩を覆うボレロ姿。すらりと伸びた身体にまろみは薄い。少し背伸びして人工池の魚を覗きこんでいる。フチに配置された水草のむこうが見たいのだろうか?
きょろりと周囲を見渡す少女の視界から咄嗟に隠れてしまった。
ミュールを軽く放り出し、ミアは浅い部分に足を浸す。大きく蹴りあげてみたりとお転婆だ。
足を滑らせたところに慌てて支えにいく。そっと近づいていたのが幸いした。
恥ずかしそうにつば広帽子でミアが顔を隠す。
足に怪我がないことを確認して木陰に座らせる。
小さくミアがなにかを呟いた気がしたからそっと耳を寄せて促してみる。
「……だって、大人のヒトだもの。レンは別にロリコンじゃないからきっと大人の女の人の方が魅力的で好きに感じるに違いないもの。彼女は魅力的で優しくて、大人だもの」
なんだろう。可愛くて仕方ない。笑うのは許されないとわかる。
「ミアが好きだよ。疑われるのは傷つくな」
誰かに押し付けようとされているように思えるのは、そう。好きじゃない。
「ごめんなさい」
思うままになることを知っているのにミアはとても自信がない。なにをおそれているのか、とてもミアが憶病なのだと今気がついた。
「いや、不安にさせてしまったのだから、ミアが謝る必要はないよ」
それより顔が見たかった。
ちゃんと顔を、目を見て『好き』と伝えないといけないと思えた。たとえ、その好きの種類がまだ不安定なものであっても。
とにかく、『ミア』を好きだよと。
そっとつば広帽子をとりのぞく。
ジェスリンに捕獲されていたはずのリョーイが温室に飛び込んできた。
なぜ、邪魔をする!?