情熱だけでもいいじゃない、なろうでアーリーアクセスな私の話。
最近色々考えている黒井です、今日思っている事は、なろうってテンプレチートで完璧な作品じゃないと駄目ですか?という疑問と、私の未熟な文章に付き合ってくださった方々へ感謝を込めて書いた文章です、そしてテンプレは嫌いだと考えている方に向けてのメッセージもあったりします。
私は四ヶ月ほど前になろうに来るまで、小説など書いた事もなく、はっきり言ってラノベのラも知らないごくごく普通の人でした、漫画とかアニメも偶に嗜む程度、ゲームなんて年に一本買えばいい位、ソシャゲも面白さが分からず飽きる、パチンコもやらないのでアニメ原作と言われても良く分からない、そんなオタクコンテンツ自体にそれほど馴染みのない人間です。
若い子がこれが面白い、アレが凄いという話をされて、薦められたお話やゲームの殆どが主人公の男の子しか幸せになれない、なんだか悲しい話だなって思ったんです、彼等に薦められたお話の幾つかが生まれた場所はなろうでした。
ランキングを覗いてみて、人気のある作品に愕然としました。
殆どが神様やそれに準ずる者からからチートを貰って、何の苦労もせずに最強になり、夏場の雑草のように大きくなって周りを侵食していく主人公、その点に気持ちの悪さを感じ、同じような設定の物語が並んでいる工場のような現状に疑問を抱きました。
「ネットとか同人小説の活動は、自分が書きたいものを書く自由があるから面白い、ああいうのは商業にはない面白みだよ」
昔、飲み屋で偶然で出会った作家さんがこう話していた事を思い出し、誰かにそうあれかしと見えない力で押し固められているなろうへの疑問を、彼等にぶつけました。
「どうして主人公以外誰も幸せになれない物語をありがたがるの?私には同じ様に見えるよ、これが皆の書きたい、読みたい事なの?」
そう尋ねた私への彼の返事はこんな言葉でした。
「流行っている、みんなが見ている、評価凄いから面白い」
まるで彼自身が馬鹿にしている昭和のテレビやマスコミに毒された人達だ、それしか知らないから正しいと思い込まされて、書く側も読む側も出版社の思惑に踊らされ、正しいと思考を停止しているだけではないか?
そんな印象を抱かせるに十分な答えでした、書いている今ならテンプレチートも多少の振れ幅があって、差異があるのを知っています、全く同じでは無いとは思います。
ですが大本が一緒で設定がほぼ同一と思うのは今でも変わりません、私は彼にこう応えました。
「みんな不正をして、誰かを蹴落として楽して主役になりたいって事?」
大して努力せず、したとしても確実に成功が約束された安定範囲だけ、手に入れた力を振るい誰かの努力を踏みにじり、相手の人生を蹴落としても自分の思い通りな世界を望んでいるのがテンプレチートだ、こう感想を述べた私に彼は言います。
「なにか面白い話を書けるんですか?説教みたいな文句ばっかり言ってますけど、俺はこの話が面白いです、頭空っぽでも読めるし夢があっていいじゃないですか!書いてから偉そうな事を言って下さい!否定ばっかりの人は口先ばかりで何も生み出さないじゃないですか!黒井の言ってる話なんてなろうじゃ底辺ですよ、せめて底辺を超えてからそういう事を言って下さい!」
要約するとこんな感じの事を言われ怒られ、なる程、今の私は思った意見を述べる事すら許されないのかとがっかりし、それなら相手と同じフィールドで話をと思い、ここで物語を書き始めました。
私の思うディストピア、異世界テンプレチートに抗う話を書こう、チート能力は世界の異物、どう考えても悪役向きな力、元々チートはゲームで不正な動きを示す言葉だ、能力者は魔王やその尖兵にしよう。
異世界はそれなりに上手くやってるはずだ、いきなり現代の知識、ネットで聞き齧った位のあやふやでいい加減な知識で適当な事を行って、世界を滅茶苦茶するのは文化爆弾にしか見えない、内政チートもやめておこう。
主人公は考えなしの子供や無責任のニートでは自分が共感できない、ちゃんとした考え持つ責任感のある人を主役に据えたい、それなりの知識と経験があるイケメンじゃないおっさんにしよう。
彼等は一人の女性を相手にするのも大変な事を理解出来ていない、同時に複数の女性と付き合う事の難しさを知らない、なら戦いで男性が死んで減ってしまった世界で義務として押し付けられ、日本と異世界の価値観に挟まれ苦しみ、それでも相手の事を考え先を見据え考え進む話にしたい。
数字や能力の数の増減で話のつまらなさや、中身の薄さを誤魔化すスキルは不要だ、代わり主人公が考え観察し、少しずつ経験を元に自分なりに頑張ればいい。
異世界に飛ばされて己の無力を嘆きながら、それでも命を救ってもらった恩を返す為に、異世界の人達と協力してチートを撃退する、誰もが当然の幸せを望みそれを叶えるため戦う世界を主人公が救う物語にしよう。
彼自身はチートを望まず、真面目に生きてきた人で呪われずにここに来たから、チートと同じ世界の人、彼の精神のあり方でチートの魔法や精神汚染などは防げるが、他に能力もない無力で矮小な人間でいい。
行き先の世界は考えられる限り美しく書き、異世界はチートを喜ぶ大いなる意思によって世界を滅ぼされた神々が作り上げて、人々と共に逃げてきた方舟にしよう。
大いなる意思によって確実に滅びへと向かっている世界にしよう、少しずつ事実を知って、戸惑い悩み、時に喪い苦しみながら、それでも諦めず絶望に喰らいつき永遠の終末に抗い、苦しみ悲しみ喜びの中、様々な事を感じ学んで経験し、少しずつ成長しながら戦う力を手に入れていく、この英雄譚の行く末は、読んでくださる方の感想や評価をしてくれる数で決めよう。
テンプレチートはなろうの大多数が望んでいる、私と主人公シュウゴはアンチだろう、意見に賛同してくれる方の数で敗北も決まる、そういう事の方が解りやすい。
私への否定や中傷は元々想定されたノイズでしか無い、なろう全体の大きな流れに逆らう彼に、チートという呪に打ち勝って欲しいと願う誰かの小さな声、その言葉や思いの数だけ強くなる、そういう願いと祈りの物語を描きたい。
だから薦められているSNSやリアルで宣伝は一切しない、アンチ作品をネットで宣伝までしてたら愉快犯の暴れたがりが来るだろう、読みたい人に手にとって貰いたいからなろう内で出来る事に限定しよう。
時間も固定して19時に設定しよう、この戦いは自分の感情だけを頼りに戦うべきだ。
最終目標は100人超え、そこまで超えれば私は意見を言っても良いらしい、どこまで喰らいつき抗えるか解らないが、言いたい事を言わないより絶対いい。
などと書き始めた物語、思い返せば装備を持たずに戦場へ向かう、まさに愚か者です。
挙げた内容もなろうの禁則ばかり、人の生き死に、絶望的な話はいっぱい、主人公は平凡でおっさん、敵がチート、さくさく進む訳が無く、書きたい事があれば平気で一万近く書き、未評価底辺が予約投稿を使い宣伝しない、なろうでやったら爆死確定と言われる事がこれでもかと詰め込まれてます。
それでもテンプレチートより自分の考えた物語の方が読みたいと思ってくださる、同じ気持ちの方が何処かに居ると信じていました。
そうして本編ではシュウゴと異世界の住人の織りなす話を、裏では異世界に落ちてくる呪われた存在チートを願った者達の物語を断章を書いて、私の描く異世界はこうであると伝えていきます。
残念な事に当時は今以上にラノベの作法など知らず、文章を書き慣れてない私が書く物語はグチャグチャ、何度も手直しが必要な酷い状態、人様に見せるのも憚られる様な出来、5月の私はその事に気が付かず投稿し、後で読み直して気付きます。
「あ、これ便所の落書き並みに酷い駄文だ」
そして修正の日々が始まります、物語の先を書いては粗を見つけ手直し、誤字脱字を見つけ修正、表現の甘い部分を加筆し、結果意味が解からなくなった部分を書き直す、書いた文章が気になって何度も書き直し、なんとか物語っぽい形にしていく作業、あらすじも何度も書き直し伝わるように、興味を持たれるように直しました。
ですがこんな物語を辛抱強く読んでくださる方がいました、当初一ヶ月ほど掛けて最初20万文字をボロボロのまま何とか書き上げ一章(今は分割したので二章)までを書き上げ、己の未熟さに私は疲弊していました。
自らが立てた高すぎる理想に、自分には才能など無い、悲しい物語が並ぶなろうという世界に一石を投じる資格など無い、辞めるべきかもしれない、そう思って終わりにしようとしていた私に、感想やレビューという言葉を掛けてくださる人が現れました。
その暖かい言葉を読んで、こんな酷い文からでも思いは誰かに届いていた、私の拙い文章から思いをきちんと読み取ってしっかりと読んでくれた人がいたと、思わず画面の前で泣きそうになりました。
その時はブックマーク30にも満たない、何処に出しても恥ずかしい立派ななろう底辺、だからこそこう思いました。
誰かに思いをもっと伝えたい、愚かにも百万人が喜ぶテンプレチートに喧嘩を売った男の意地を見せたい、物語を最後まで書いて、ボロボロの文章に付き合ってくださった方に応えたい。
折れかけた闘志に火がつきます、やってやる、もう一度自分の書いた物語と一緒に大いなる意思に逆らってやるぞ、と。
そこからは今までの作業も並行し、少しずつ色んな事を学びました、それこそ初歩の初歩、皆さんが知っているラノベの最低限の作法からです。
どうしたら自分の気持が伝わるかを考え続きを書き、当時書いていた現在の三章を何とか終わらせ、その後リアルが忙して一ヶ月休みを頂いて、その間も少しずつ手直しを繰り返し、最近ようやく再開した物語。
休む前はもう見捨てられる覚悟をしていました、それでも皆さん見捨てず待ってくれていました、続きを読んでくださって、再開を喜ぶ温かいお言葉を頂きレビューまで頂きました。
週に一回から二回、今までより遅い更新に関わらず、いつの間にかブックマーク数は底辺を脱出、何も知らないド素人がテンプレチートに喧嘩を売って宣伝無しでブクマ100件、なろうでは無謀過ぎる目標を達成したのです。
この目標は物語が終わった時に達成する目標でした、道半ばで未だ終わりすら見えていない状況で迎えるのは、私にとっては嬉しい誤算です。
同時に自らの予想を超えてしまった評価に、私は目標を上方修正し物語を一段と深く考え、自分へのハードルを高くしなければなりません、そうしなければ私の物語は成立しないのです。
こんな未だ見直す度に直したい直すべき所を発見する作品が認められたのです、そして同時にこう思いました、読者さんは優しい方が多かった、思った以上にテンプレ以外の物語を望む声は大きいと。
現状、私の作品は開発途中のゲームに投資してもらうアーリーアクセスのゲームをプレイして頂くような物でしょう、そう納得された方がブックマークを入れてくださったと思っています。
その投資に応えるのが私の恩返しで、感想で批判を受けていないのは、読んでくださる皆さんが投資に見合った開発状況である、そう納得してくださっているんだと思う事にしました。
そうして、今は書きたいと思う事をのびのび書いて、見つけた修正をコソコソしています、多分最初から読んでいる方は、私の成長も同時に楽しんで頂いてるかもしれません。
だから敢えて言います、何も知らないド素人でも身に余るほどの評価が貰えるのです、なろうに喧嘩を売るような作品でも評価が貰えるんです、だから恐れずにテンプレチート以外を書きませんか?
テンプレ作品感想欄や掲示板で文句を言うだけではなく、カウンターカルチャーとしての作品を書くのです、貴方の情熱をなろうにぶつけて、アンチとして胸を張って逆風を嘆くのを止め、それに抗い船を漕ぎだす冒険者になって下さい。
そんなドン・キホーテな黒井からのメッセージが誰かの心を動かせるといいなぁなんて思っています、そしていつの日かなろうテンプレの牙城、ハイファンタジーにアンチテンプレチート作品が並ぶことを夢見ています。




