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曲解読書感想文:桃太郎

作者: 三堂いつち

「日本で最も有名な昔話といえば?」


 こう問われると多くの人がこう言うだろう。


「桃太郎」と。


 昔々、あるところにお爺さんとお婆さんがおりました。おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。

 おばあさんが川で洗濯をしていると、大きな桃がどんぶらこどんぶらこと流れてきました。おばあさんはその桃を拾って、家に帰り食べようと切ると中から赤ん坊が出てきました。子供がいなかったおじいさんとおばあさんはその赤ん坊に桃太郎と名前を付けて可愛がりました。

 そして、おじいさんとおばあさんの愛を受けすくすく育った桃太郎は、最近悪さをしているという鬼を退治するために鬼ヶ島に行くと言います。おじいさんとおばあさんは桃太郎にきびだんごを渡して桃太郎を見送ります。

 鬼ヶ島へ向かう道中。きびだんごで犬、猿、雉をお供に加えた桃太郎は遂に鬼ヶ島へとたどり着き、鬼を懲らしめ、鬼たちが奪った財宝を取り戻しました。

 そしておじいさんとおばあさんの元へ帰った桃太郎は幸せに暮らしましたとさ。

 めでたしめでたし。


 大体こんな話である。若者が悪者を懲らしめるという、勧善懲悪の王道物語。恐らく多くの人はこの物語から正義というものを学んだであろう。


 だが、そんな子供も大人になってしまうと急に桃太郎をイジリだすのである。

 やれ「桃を割ったら中の桃太郎切れるだろう」とか「きびだんご一つで鬼と闘わせる桃太郎は非道」だとか「そもそも何で桃から赤ん坊が生まれるのか」とか、考えた人も少なくはないのではなかろうか。

 しかし、私はこれらの問題は些末であると考える。

 それは何故か。それは桃太郎が今風に例えるならファンタジーの物語であるからだ。リアルではない。桃を真っ二つに割っても中の桃太郎が無事であろうと、妙に忠誠心のある喋る動物がいようとも、桃から赤ん坊が生まれようとも、ファンタジーであるこの物語には何ら不都合になりえないのだ。

 だからと言って、「作り物だから」という言葉で吐き捨ててしまうのはあまりにもロマンがない。なので私は「物語だから」と言うことにする。

 物語には展開というものが必要で、上記に問題点として上げたものは桃太郎という物語を盛り上げるエッセンスなのだと。これらの要素があって桃太郎という作品は成立しているのであると私は言いたいのである。


 さて、ここまで理解してもらえたところで、いよいよ本題である。ここからが本題である。今までのは前フリである。

 ここからは角度を変えて桃太郎を見ていきたい。テーマは倫理だ。

 始めにも書いたように、桃太郎は悪さをしているという理由で鬼を退治に行くと決意した。これよく考えてみて欲しい。


 これ、桃太郎は一切被害を被っていないのだ。


 言うなれば江戸の仇を長崎でとるどころか、報復でもないただの暴力行為である。しかも鬼側からすれば財宝も奪われて、その所業まさに強盗そのもの。

 いやちょっと待てと。鬼は確かに人を襲い財宝を奪った。ならその報復を受けるのも当然だというものだろう。

 しかし考えてみて欲しい。人を二度と襲わせないように言い聞かせるにも、財宝を奪い返すにも確かに多少の暴力はやむを得ない。だが鬼が何の躊躇いもなく桃太郎土下座をするまで心を折るのはやり過ぎとしか言いようがない。

 だがしかし何てこった。鬼は桃太郎を見つけるなり襲いかかったのだから正当防衛が成立している。


 つまり倫理をとって見てもこの桃太郎、道を逸れているとは言い難い。


 なんとも無敵のヒーローだ。

話の内容が所々違うのもありますが、私の知っている桃太郎は大体こんな感じということで。

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