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本編 42 〜トリニティ・タワー 16 〜

 トリニティ・タワーで瑠璃達が……

60.戦うべき相手

 その少し前……

 瑠璃30と瑠璃31は互いに見つめ合いながら階下へと進んでいた。……銃口を下に向け、ウサ耳で階下の気配を警戒しつつ……進みながらも在ることを考えていた。

(相応しい相手……?)

(……戦うべき相手?)

 ぶぅうぅぅっん。

 下のフロアまで降りたとき……不意に頭上にあるインフォメーション用のモニターに電源が入った。

 歩みを止め、モニターを横目で睨みながらも……思考演算は止まらなかった。

 何気なく瑠璃31が呟いた一言が行動を止めていた。今、瑠璃30達の思考回路に在るのは……自分自身が造られた理由。

(私達は……)

(……対テロ用アンドロイド……として……いや)

(対テロ用アンドロイドとして作られたLapis Lazuliを越えるため……)

(違う。lapis Lazuliと戦い、そして勝つために造られた)

(ならば……)

(……戦うべき相手とは)

 二人がほぼ同時に同じ結論に達したとき、モニターがある映像を不意に流した。


『ご覧下さいっ! Lapis Lazuliがっ! 警察の許可を得てっ! テロリスト達を殲滅するためにビルへと向かっていますっ!』


 モニターを見上げ……睨む。

 その時、フロアの両端のドアから……幾体かのアンドロイドが出てきた。

 手に持った拳銃を二人に向けて……次々と弾丸を発射して……

 見れば……そのアンドロイド達はLapis Lazuli型。少なくとも外見は間違いなくLapis Lazuli市販型#1から#3の機体に見える。

「っ!」

「反撃開始っ! 各個撃破っ! 戦闘能力を証明するわよっ!」

 構えた自動小銃を乱射しながら、二手に分かれて突撃していった。

 ……何故か、微笑みながら。



 その少し前……

 さらに下のフロアで瑠璃10は係員を捜して彷徨っていた。

「おかしいわね……誰もいない」

 白衣姿で歩き回っていた瑠璃10の背後に……ふと、物陰から影が伸びるように1人の男が現れた。

「……どちらさまでしょうか? 係員……の方では無さそうですけど?」

 振り向きもせずに、瑠璃10が尋ねる。

 男は一瞬、たじろいだが即座に手に持つ棒……いや、長銃身のライフルを瑠璃10を向けて、言い放った。

「そのまま……服を脱げ」

 下衆な要求に瑠璃10は眉を顰めた。

「……随分とストレートな表現ですけど……その要求に従う必要性は? なんでしょうか?」

 バジッ ギュゥン

 壁の破裂音の後に発射音がフロアに響いた。音速を超える弾丸がもたらす現象。つまりは……

「……大口径ライフルを持っている。つまりテロリストということですか」

 溜息混じりに瑠璃10は相手に確認するかのように呟いた。

「そうだ。仕事を……血を見た後は女が欲しい。……それだけだ」

 もう一度、溜息をついてから瑠璃10は相手に確認した。

「脱げと言うことですが……脱がしに来たら如何ですか?」

 瑠璃10も対テロ用アンドロイド。接近戦ならば武器を持っている相手でも不足はない。

「……いや、窮鼠猫をかむという事もある」

「嫌だといったら?」

 もう一度、壁に弾丸がめり込んだ。

「標的にする……それだけだ」

「……仕方在りませんね」

 瑠璃10は白衣に手をかけて……動作を止めて後ろの男に確認した。

「白衣のポケットに取り扱いが微妙なモノが入って居るんですけど……取り出しても宜しいかしら?」

「微妙なモノ?」

 男は……ニトログリセリンを即座に思い付いたが、そんなモノをこの国の女性が持っているとは考えられなかった。

「……いいぜ。出してこっちに投げてみな」

(精々、香水の類だろう)

 苦笑混じりに指示した。

「あら? 投げても宜しいんですのね?」

 瑠璃10は確認しながら取り出そうとした。

「待て。ゆっくりと……だ」

 男の指示通りに、ポケットに手を入れて、カチリと何かから外した音の後にゆっくりと取り出したそれは……乾電池だった。

「は? はっははは……そんなモノが微妙なモノだと?」

「そうよ。確認して貰えるかしら?」

 後ろ手のまま、男の方へ放り投げる。力なく放られた乾電池は二度三度と床に跳ねて……廊下の端に止まった。

「ふっ。何も起こらない。何が『微妙』なんだ?」

 男は戯れにその乾電池を撃ち抜こうとした。

 その瞬間っ!

 ドォオンっ!

 白煙とともに乾電池が爆発した!

「うぉっ! 待てっ!」

 爆発は……男にとっては慣れている。距離もあって、大した恐怖も影響もない。

 それよりも心配したのは女が逃げること。

(煙幕ならば、逃げ出したはずだ。逃さんっ!)

 傭兵としてのそれまでの経験がいつもの展開を男の脳裏に描かせ、躊躇せずに白煙の中へと飛び込んだ。

 しかし……

「待てと言われなくてもこちらから出向きましたのに」

 火薬が爆発したときとは違う冷たい白煙の中で背後から聞こえた女の艶めかしい声。

「対テロ用アンドロイドである私が標的を見逃すわけがないでしょう? テロリストさん」

 それが男の記憶に残る最後の言葉となった。


 その頃、瑠璃はある部屋へと続くドアを開けた。……いや、破壊した。

「……ここも誰もいない。まったくっ……」

 部屋の殆どに砂。傍らに椅子が並んでいるのは……何かの展示室だろうか。

「……先に部屋がある。確認しなくては……」

 反対側の壁に奥へと続くドアを見つけ、砂の縁を歩く瑠璃の背後で……


 ……砂の中から伸びた触手が追いかけ始めた。



 これはニフティのSFフォーラム内にあった「マッドSF噴飯高座」より派生した拙作です。


 宜しかったら、投票、感想など戴けると有り難いです。

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