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プロローグ1

今から半年前。

俺が中学校を卒業し、妹が小学校を卒業した春の日のこと。

妹が引きこもりになってしまった、ある出来事。




「おにいちゃん、見て見て」

妹の四条水姫が、自慢気に中学の制服を見せびらかしてくる。

「すげー似合ってるよ」

俺はそんな妹が鬱陶しくて、適当にあしらう。

「そんなことしてねーでさっさと昼飯食えよ」

言いながら、テーブルの上に次々と料理を乗せて行く。

俺の両親は仕事で海外に行ってしまっていないので、料理は基本的に俺がしている。

「はーい」

水姫は膨れながらもイスに座り、料理を口にし。

「モグモグ」

小動物みたいに口を動かせる。なんだこの可愛い生物は。

「どうだ? うまいか?」

やや食い気味に問う。

しかし、水姫は応えず、俯いて「うぅ……うぅ」と言いながら震えている。

やべぇ、味付け間違えたかなぁ、と思っていると。

「うまい! うまいよ、おにいちゃん!」

勢いよく言い放った。

ベタだな。でも可愛かった。

とりあえず喜んで貰えたことにほっとする。

「どんどん食えよ」

「うんっ」

そんな会話を終え、先に食事を済ませていた俺は、フライパンや鍋やらを洗う。

作業を続けていると、不意に背後でごとん、と音がした。

どうしたんだろうと思い 、振り返る。

「おい、どうし――」

そこで絶句した。


水姫が床にうずくまって倒れていた。


俺は慌てて水姫の元に駆け寄り、肩を抱いて体を起こした。

「お、おい! どうしたんだ!? 大丈夫か!?」

必死に呼びかけるも、「うぅ……うぅ」と唸るだけで返事はない。

さっきみたいに冗談でしてるようには見えないし、まじでやばいかもしれない。

その後も呼びかけていると。

「ぉ、おにぃ……ちゃん。……だ……め」

と弱々しく声を出した。

すると、水姫はゆっくりと立ち上がった。

力が入らないのか全身が小刻みに震えている。

そんな水姫の肩を掴んで。

「何があったんだ? どこか苦しいのか?」

できるだけ優しく問いかけるが、「や、め……て。だめ……なの」と言うだけ。

そんな水姫を見つめていると、不意にびくんと体が飛び跳ねたように大きく震えた。

「だ、だめ……もう……」

水姫は顔を真っ赤にしてこっちを見つめ。

「も、もう……だ、だめぇぇぇ!」

泣きながら思いっきり叫んだ。

すると、びちゃびちゃびちゃと水が垂れるような音がした。

なんだろう? と思いながら、音のするほうを見てみると。


水姫がおもらししていた。


「ちょ、お前これ」

俺は赤面しながら呼びかける。

「や、だ……見ないでぇ」

言いながら号泣していた。

「と、とりあえずタオル取ってくるから待っとけ」

俺はそう言って水姫の肩から手を離し、タオルを取りに向かう。

支えがなくなったせいか、水姫は膝から崩れ落ち、自分のおしっこでできた水たまりの上に座り込んでしまった。

泣きわめく水姫の声を背中で受け、俺は部屋を出た。





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