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架空職業・監視屋ときお『Choice』

作者: 日魚ときお

超巨大国際都市、東京。通称帝都。

ここには『仕事屋』と呼ばれる者たちが人知れず潜んでいる。

『監視屋』『護り屋』『奪い屋』『運び屋』『修復屋』…。

あるものは異能で、

あるものは知恵で、

あるものは技術を使い、

彼らは帝都に蔓延る悪意と戦う。

渦巻く光と闇の中、『仕事屋』は確かに存在している───。



診断メーカー『仕事屋さんになったー』から触発され、Twitter上で投下したストーリーを、編集、加筆したのものです。

Twitter上では『#架空職業』のタグ付きで投下しています。


【診断結果】

TOKYOは監視屋です。性別は男、桃色の髪で、変態的な性格です。武器は不明。よく一緒に仕事をしているのは掃除屋で、仲が悪いのは奪い屋です。

http://t.co/T57mAsrH


監視屋ときお

張り付いたような笑顔が特徴的な、長身の監視屋。髪はピンク。謎が多く、不気味な噂が絶えない。そら豆に手足と一つ目がついたような不思議な生物『メマメ』を使役する。壊れた玩具のような、ほのかな狂気を身にまとっている。

とある雑居ビルの上。

ギシギシと錆びれた柵に外側から寄りかかりながら、ときおは双眼鏡を構えていた。

その先は監視対象者の方向を向いてはいたが、ときおの目は閉じられている。

彼の瞼の裏に映っていたのは、メマメ達が見ている世界。

数人の男たちが、ときおのいるビルの階段を音もなくかけ上がっている。

ぱちりぱちりと時折瞬きで暗くなるその映像を見ながら、ときおはやれやれ、と首を傾けた。

装備は銃ぐらいだな。

相手に思い当たるフシはなくもないが、数が多過ぎて全てを把握などしていなかった。


こうして命を狙われることは珍しくない。

ときおの『監視報告』で壊滅に追い込まれた組織は多いし、『通報』で依頼をパァにされた仕事屋も少なくない。

いつもならこのままメマメ達をけしかけて終わりだが、今日は『遊ぶ気』になった。

ストレスが溜まっていた、のかもしれない。


───ストレスとカ。


ときおは思わず苦笑する。

オレってそンなに繊細に出来てタっケぇ?

ふと頭の端に紫髪の男が思い浮かんだが、無視する。

とりあえず、楽しもうか。

メマメに監視対象者を追尾するよう命令をして、ときおはその時を待つ。


バンッ!

ヒュン!

「ぐはっ!」

ドアを蹴破ると同時に飛んできた双眼鏡が襲撃者の顔にクリティカルヒット。まず一人。

「このっ…!」

次に出てきた男が発砲するが、その時には既にときおの体は宙に浮いていた。

階段の段差を飛び降りるぐらいの気楽さで、屋上からジャンプする。

慌てて確認しようと柵から身を乗り出した男の顎に、勢いをつけたアッパーカット。

「建物の構造ぐラい確認しトきなヨぉ」

一つ下のフロアに設けられたベランダの屋根の上から、ときおが笑う。

屋上から飛び降りても、この屋根が邪魔して地上には落ちないのだ。

「なっ…」

他の男があっけに取られている隙に、ときおは今度こそビルから飛び降りる。

助走の無い跳躍。

いくら高低差があるとはいえ、普通の人間なら無茶な距離だ。

だが当たり前のように隣のやや低いビルに飛び移ると、くるりと振り向き笑って見せる。

「じゃーネぇー」


「この野郎っ!」

後ろから銃声が聞こえてきたが、既にときおは次のビルへと飛び移ろうとしている。

「くそ、狙撃班はなにをやっている?!」

焦る男がいくら無線で呼びかけても、応答はない。

それもその筈、相手は既にメマメにもみくちゃにされていた。

もうパンツは残ってないだろう。


給水タンクの影になったところで、ときおは方向を変える。

高級そうなマンションの出窓に降り立ち、そこからベランダへ移動。

そして窓の中へと侵入。

ベッドの中にいた裸の男女が悲鳴をあげたが、「わリぃわリぃ、窓開いテたゼぇ」などと軽いノリでスルーする。

玄関を出たところで、視界の隅にメマメを発見した。

巨大な蟻塚のようになったメマメの塊だ。

おそらくこの中心部にいるのは、先程の連中の仲間。

「意外と計画テキだったンだネぇ」

こんなところにも刺客がいたとは。

ときおが逃げるのも計算して、各ビルに配置していたのだろう。

感心していると、そのすぐ脇に『それ』を見つけた。

「イーもンめーっケ」

ひょいと『それ』を手に取ると、ときおはズボンの後ろのベルトの隙間に無造作に突っ込んだ。

あってもいいし、無くしても構わない。

あればあったで楽しい。そんなシロモノ。


外付け階段から電柱を伝い、隣のマンションへと移動する。

非常口のドアノブに手を掛けると同時に、内側からカチャリとメマメが鍵をあけた。

いい子ダね、とそのメマメを撫でながら、今度は中に入ったときお自身で鍵をかける。

ここは学生専用だったかな、平日の昼間、中には誰もいない。


───はずだった。


「ヘぇ?」

ときおは面白そうに首を傾げた。

視線の先には見慣れない男。

少なくとも知り合いじゃない。

だが、明らかに一般人じゃない。

「アンタが、監視屋ときおか」

「ふぅン、ルーキーだネぇ?」

ときおを知らない、と言うことはそう言う事だ。

「ただのルーキーじゃない。オレは…」


───ダンッ!!


男の言葉を遮って響く騒音。

一体何が起こったのか、男には理解できなかった。


カチリ。

安全装置が外される音が耳に届く。


「異能者ダね」

男の上に馬乗りになったときおは、まだ状況を把握していない彼を見下ろしながら目をスイと細める。

「どンなにごタイソーな技を使うヤツでもサぁ、使ワレる前に倒シちゃエばいい話なンだヨね」

ときおの右手には、先程の刺客から奪った『それ』──拳銃が握られていた。

その銃口を口に突っ込まれた状態で、男はやっと自分の置かれた現状を理解した。

呼吸が荒くなり、汗が噴き出す。


カサリ、カサリ。

いつの間にか二人の周りを、メマメ達が囲んでいる。


「サ、選びナよ。──死ヌのと、ぱんつ食わレるの、どッチがイイ?」


ニッコリと、ときおが笑った。




最後のセリフが書けて満足。

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