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第八話   「後悔」

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 Tea time.8

  A female cat woke up to the twittering of a small bird.

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「大っキライ!!」



 走り去る少女。執事は呼び止めず、ただ溜め息だけを漏らした。


 原因は些細なことだ。最近、少女の就寝が遅くなっていることをたしなめただけなのだが、どうも、お互い歯車が少しずれたように、口論が歪な方向に向かってしまった。


 追いかけはしない。


 それで自暴自棄になるほど彼女は愚かではないし、家出をするほど「強く」もない。


 そも、このような事も極めて珍しいというわけではなかった。



「あら、こんな遅くに痴話喧嘩?」


「覗き見とは人が悪いですね。それに、痴話は余計でしょう。お嬢様にも失礼です」


「もう…。二人きりなんだから、堅苦しい言葉使い、やめてよ」


「……夜は更けても、この服を着ているうちはそうは行きませんよ。あなたも、まだ仕事中でしょう」



 ホールに繋がった廊下から顔を出した、シックな紺色にまとめられたメイド服を着た女性は、ふふん、と軽く笑う。



「あらかた終ったわよ。残ってるのは、戸締りのチェックと…貴方の部屋のベッドメイク、かな。寂しいのなら、朝まで添い寝してあげるけど?」



 擦り寄る。


 吐息と共に絡ませてくる柔肌は、少女が普段してくる暖かさと違い、気を抜くと堕ちるような、熱さ。


 執事は、しばらくそれを味わうように、任せるままにしていたが、やがて軽く彼女を押しのけた。



「……やめておく。そういうことは、雑念抜きでないと、君にも失礼だろう」


「あたしは構わないけど……ううん、やっぱり嫌ね。心の何かを埋めるためなら、遊びでも良いけど、誰かの代わりじゃ悔しいから」



 少しだけ名残惜しそうに。


 執事の頬に唇の感触を残し、彼女は離れた。



「お休みなさい。気が向いたら、あたしの夢に遊びに来てね。」


「お休み。気が向いたらそうさせてもらうよ」





 どうせそれも、お嬢様(あの子)の機嫌を取る方法を思いついた後でしょうけどね。


 執事を見送る女の、軽いため息。


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