第七話 「盤上」
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Tea time.7
Checkmate!
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「ああん!もう!」
チェックメイト、の声を聞くまでもなく、少女は駒を崩した。
「もう夜も更けました。そろそろお休みされた方が…」
「もう一回だけ!納得いかないわ。あなたチェスは初めてだって言ったのに、なんでわたしが一回も勝てないのよ!」
「私の故郷に、良く似たゲームがあるのですよ」
少し、昔を思い出すように仰ぐ執事。
「ふぅん……ねぇ。貴方の国のこと、聞いてもいい?」
「どのようなことについてです?」
「ううん、なんでもいいの。単に、貴方の国の話が聞きたいの」
「構いませんよ。それでは、明日のお茶の時にでも…」
「イヤ。今聞きたいの。それを聞いたら眠るから。夜伽話代わりに…ダメ?」
彼女は上目遣いで伺うように執事の顔を覗き込む。
「……本当に、それを聞いたらお休みになりますか?」
「もちろん」
だから、お願い。と、少女は片目を瞑る。
命令ではなくお願い。
だからこそ、逆らえないことがある。
彼は、決して主に分からないよう、肩だけでため息をついて、
「分かりました、それでは……っと、どちらへ?」
「うん、貴方の寝室よ?わたしのベットでは、貴方には小さいし」
「……あの、話が見えないのですが」
「さっき、わたしは『夜伽話として』って言ったわよね」
貴方はそれを承諾したわね、と、少女。小悪魔的な笑みを浮かべて――
「だから今日は、わたしの隣で寝てくれるって事でしょ?」
――チェック・メイト。