第六話 「責務」
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Tea time.6
The girl wields her pen, bound by sacred duty.
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カッカ、カリカリカリ…
ペンを走らせる音が、書斎に響いている。
書類の目録のチェックとサイン。それが、少女の責務。
ただそれだけの単調な作業は、スペル一つの過ちで、幾人の人生すらも左右する。
本当は、それを背負えるだけの器は自分にはない。だからせめて――。
一枚たりとも、怠ることなく、誠実に。
それが、己にできる精一杯。
不意に差し出されたカップには、暖かい紅茶が満たされている。
少女の感謝の言葉と笑顔に、執事は声は出さず、静かに頭を下げる。
そしてまた、今までと同じように、半歩下がって彼女を見守った。
ペンを走らせる音が、書斎に優しく響いている。