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執事さんとお嬢様 ~甘党の為のお茶会~  作者: ぐったり騎士
サブストーリー:メイドさんと見習い少年
66/70

第五話   『泣く少年』 ジョヴァンニ・ブラグリオリン

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Canvas.5

 He drew the world without faces,

  yet found a gaze that asked to be captured.

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 初めて描いた絵は、おもちゃの船。

 

 欲しくて、でも、どうしても手に入らないと理解して、それでも諦められずにいて、気がついたら紙に描いていた。

 それからというもの、欲しいものがあれば、すべて絵に描いた。

 紙がなければ地面に、絵の具が無ければ草を潰して描き続けた。

 そうして出来た『もの』は、間違いなく自分の『もの』だと信じて。




「風景画ばっかりね。ちょっとだけ静物画があるけど。人を描くより、こういうのが好きなの?」


 初めての休みに、久々に絵を描いていると、メイド服のままサボりに来たという彼女がそんな事を言う。


「……いや、単に人を描くのが苦手なんだ」


 嘘ではない。描けない、というのが苦手のうちに入るのなら。


 

 僕は風景を描く。建物と自然だけの世界を。

 誰も居ないの世界なら、僕が貰っても、いいんじゃないかと思うから。


「じゃあ、あたしをかいてくれない?」


 唐突に、彼女はそんな事を言う。

 ぎょっとして彼女を見ると、くりくりと目を大きく開いて、僕の言葉を待っていた。


「そうだね…気が向いたら」


 なぜかばつが悪く感じて、僕は目をそらしながら答える。

 その答えに、ちぇ、と大げさにすねる彼女。

 

 気が向いたら、か。

 そんな日が、いつかは来るのだろうか。

 だって、人を描いても、それは自分の物にならないって、僕は知っている。

 

 何十枚と描き続けた母の絵が、炎と消えた、あの日から。

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