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執事さんとお嬢様 ~甘党の為のお茶会~  作者: ぐったり騎士
サブストーリー:メイドさんと見習い少年
65/70

第四話   『フレデリック・バジールの肖像』 ピエール=オーギュスト・ルノワール

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Canvas.4

 I'd like to introduce you to the children of my grandfather,

 who have been sleeping for too long.

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「ここ、自由に使っていいわよ」


 少女は、まるでペンを一本貸したような口調で――

 画材が積み込まれたアトリエを前に、少年は口を開いたまま立ち尽くしていた。

 

「あ、あの…ここって…な、なんで…」


「祖父の趣味らしいんだけど。必要ない?」


 大慌てで首を振る。

 確かに絵を描く道具の費用は持ってもらえるとは聞いていたが……

 まさか、絵を描くためだけの一室を用意してもらえるとは、考えてもいなかった。

 館の離れに案内され、扉を開いた瞬間に広がった、嗅ぎ慣れたツンとした絵の具の匂い。

 元の持ち主とは、相当趣味が合ったらしく、部屋の配置、道具、絵の画風、それら一つ一つの意味が、わかる気がする。



「必要なものがあれば、書類を書いて提出しなさい。無意味に高価なものでなければ、用立てるから」


 そのかわり、契約どおり、たまには館に飾る絵も描いてね、と。

 契約というよりは、友だちと遊びの約束を交わすように。

 

「お嬢様は…僕の絵に、そんなに価値があると思うんですか?」


「金銭的な意味で言ったら、ないかもね。今後どうなるかは知らないけど」


 そんなことを、あまりに毒気なくいわれては、悔しさも沸かない。

 しかし、それならどうして――

 そう問うと、少女は少しだけ寂しそうに笑う。

 

「だって、わたしじゃこの子達と遊べないから」


 愛し子の頬を撫でるかのように、手近な絵筆に指を這わせる少女。

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