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執事さんとお嬢様 ~甘党の為のお茶会~  作者: ぐったり騎士
サブストーリー:メイドさんと見習い少年
64/70

第三話   『ラ・スープ』 ウィリアム・アドルフ・ブグロー


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Canvas.3

 He found a seat at a table where all are equal,

 and discovered the warmth that feeds not just the body,

 but the heart.

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「あの、こ……れをもって行くように……っと、言われた……んだけど」


 大きな樽で小さな体を覆い隠すようにしながら、少年が厨房に入ってきた。


「ありがと、そこにおいといてくれる?……ついでに、少し休んでいきなさい」


 顔を真っ赤にしながら呼吸を乱している少年に見かねたのか、メイドは部屋隅の椅子を指差す。

 頷いて少年が腰を下ろすと、紅茶の入ったカップを渡された。疲れた身体に、甘さが心地いい。


 ふと、少年は自分が運んできた樽に目を向けて、


「この樽は、今日の夕食用?昨日の夕食も美味しかったし、ちょっと楽しみだよ」

「ありがと、うれしいわ。昨日のは、あの子も気に入ってくれたみたいだしね」

「……あれ?あの子……っじゃなくて、お嬢様も同じものを?」

「そうよ?どうして?」

「……だって、普通は主人はいいものを食べて、召使は残り物……とは言わずとも、ありあわせの物で済ませたりするんじゃないの?」


 少なくとも、自分が知っている『お偉いさん』はそういうものだったし、それは当然だとも思う。


「あたしも始めは、『いいのかな?』って思って、直接聞いてみたことがあったんだけどね」


 くす、と、そのときを思い出したのか僅かに笑って


「賄いのほうが美味しそうだったら悔しいじゃない――って」


 メイドは思う。

 それはきっと、半分は本気だろう。そして残りは、彼女の彼女の照れ隠しだ。

 だって、自分が一人だけ皆と違うものを食べているのは、それが豪華であれ貧しくあれ、とても寂しいことだから。

 

 少年は、やっぱり納得がいかないという顔で、


「やっぱり、よくわからないよ」


「そっか……」


「・・けど」


「けど?」


「貴方の料理はおいしいから、ボクも、そんな気持ちになるかもしれない」


 この館が、前より少しだけ気に入った気がした。

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