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第四十七話 「決意」


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 Tea time.47

  Does Our Bond Yet Linger There?

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「……おはよう」


「おはようございます、お嬢様」

「お嬢様、今日の朝食はあたしの自信作ですよー」



 少女の朝の言葉に返答する、メイドと執事の二人。

 気づくと、一緒にいる二人。


 いつもの事だ。

 いつもの事なのに―-

 

 ザッーっと、まるで視界にノイズが走るように。

 あの時見た、執事(かれ)の過去の写真が脳裏に映し出される。

 

 あの、自分に見せた事のない表情。

 それが、メイドの彼女と話している時の彼の顔に重なってしまう。



「お嬢様……?」



 執事の問いかけ。


 はっ、と。

 自分が軽く唇を噛み締めていた事に気づく。



「う、ううん! なんでも……」



 ――ないわ、とは、続けられなかった。

 

 ずっと、誤魔化してきた。

 いつもどおりの自分であり続けられると、そう思った。

 

 それは、なんて愚かしい幻想だろう。

 そんなもの、ちょっとしたきっかけで簡単に崩れてしまうというのに。



「……ごめん、なさい……」



 呟いて――少女は、足早に自室に飛び込んでいった。







 溜息。

 

 自分の態度を、二人は――彼はどう思っただろうか。

 全てが変わっていく気がする。

 全てが終ってしまう気がする。


 泣きたい――。


 涙は流れていたが…嗚咽はしていない。

 それを泣いてないと表すのは、単なる強がりである事はわかっていたが。


 誕生日ももうすぐだというのに、自分は何をしているのだろう。

 そんな事を考えながら――



「……誕生日?」



 呟く。

 

 はっとして身を起こし、卓上のカレンダーを見た。

 

 

 一週間後。それが自分の誕生日だ。

 同時に毎年恒例の、この館のダンスパーティの日でもある。

 

 そして、もう一つ。その日は――。



「……ぐすっ…」



 一度だけ、鼻を啜り、クローゼットの横の大鏡を見た。

 涙で歪めた自分。情けないことこの上ない。

 幼いと自覚しても、自分は誇りある、この館の主人ではなかったのか――!

 

 よし、と。


 涙を拭い、もう一度向き直る。

 鏡に映し出された少女(ジブン)の姿。

 そこに表れるのは――。



 恋する乙女の、覚悟。


あと3つー

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