第四十五話 「初恋」
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Tea time.45
Bound by My Shame, I Cannot Meet Your Gaze,
Yet Who Lingers in Your Eyes, Who Dwells in Your Heart?
I Yearn to Know, Yet Tremble at the Truth.
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「お休みなさいませ、お嬢様」
「おやすみ、明日も、よろしくね」
少女はドアを閉め、鍵をかけると、そのままその場で立ち尽くしていた。
執事の靴音が、部屋から遠ざかっていくのを確認して、はぁ……、と大きな溜息。
そして扉に寄りかかりながら、ずるずるとその場に座り込む。
気づかれなかっただろうか。
今日の一日、出来る限り、いつもどおりに接する事ができたと思うけれど。
心臓が、まだ高鳴っている。
今になって、顔が一気に火照っているのがわかる。
全ては、数日前に、執事のあの姿を見てからだ。
まともに顔を見られない。
声をかけることですら、勇気が要る。
あれほど、彼が自分のそばに居てくれる事を望んでいたというのに。
頬に接吻けられた事も、接吻けた事もある。
抱きしめられる事は珍しくない。
髪を撫でられたり、執事の手を取り頬に寄せるのも、自らが望んだ事で――そのときはいつも心が安らいでいた。
でも、今は――。
彼の、脆さを見てしまった。
彼の、弱さを知ってしまった。
たった、それだけだというのに。
「どうしよう――」
自分は今、生まれて初めて、本当に恋をしてるのだと知った。
ラストまであと5話ー




