幕間7 「聖夜祭の贈り物」
-----------------------------------------------------
Intermission.7
Merry Christmas !
-----------------------------------------------------
「よし、と……」
用意したプレゼント袋を片手に、執事は少女の部屋の前に立つ。
少女はすでに、トナカイを駆り子供にプレゼントを配る老人を信じる年ではないが――こういう余興は、贈る側も贈られる側も、楽しいものだ。
部屋にははいらず、扉を少しだけ開けてプレゼントを置く――予定だったが、主たる少女の側に、一人のメイドがいて、動きを止める。
なるほど、どうやら彼女も目的は同じだったようだ。手招する彼女につられるように、寝台の側へと近づく。
「あなたもなの? 考える事は同じね」
メイドは執事に含み笑いをしながらそういう。
執事も苦笑しながら――
「……声を潜めなさい。お嬢様が起きてしまったら大変です」
「大丈夫、ちゃんと料理に眠り薬仕込んでおいたから」
「……は?」
執事は、メイドの発言に、こいつは何を言っているんだと目を見開いた。
「もう、あなたもお嬢様の寝顔覗きにきたんでしょ! ……ほらほら、幸せそうに寝息立てて……うふふふふふ」
「……私は、聖夜のプレゼトを置きに来ただけですが」
「ほっぺがふにゅにゅんって…ふふふ……ふ?」
執事の手元を見る。
確かに、小さなプレゼントボックスを左手に持っていた。
「今月の給料査定、マイナス…」
「お嬢様寝顔シリーズコレクションで、どうですか?」
執事の言葉をさえぎるように、すかさず懐から数枚のスケッチを取り出す。
そこには、少女の寝姿が描かれている。しかも、無茶苦茶上手かった。
「こ、これは……! ……う、ぐ」
執事の前ですらめったに見せないような、完全に無防備なその様子。
いや、口元から少し涎をたらして幸せそうに寝ている姿など、青年の前でだからこそ、絶対に出さないはずだ。
確かに貴重なショットである。
心が揺れ動くが――
執事は、一度頭を大きく振ると、彼女を睨み付ける。
そして、全てを振り切るように、堂々と言い放った。
「……査定、プラス1でどうですか」
「プラス2で」
二人はお互いの手を厚く握り合う――そんな、聖夜のファンタジー。
ネタ回は今回で最後。
また、今までは1話完結型の話が基本でしたが、次回以降は最終回である50話に向けて、執事、お嬢様の関係が変化する連続シナリオとして話が一気に進みます




