第四十三話 「夢現」
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Tea time.43
Sleeping Beauty Dreams of Her Raven-Haired Prince.
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暖炉の火が踊る。
ソファーに座りながら立てた両膝を抱え込み、少女はそれを何となしに見続けていた。
優しさが揺蕩い、暖かさと共に包み込む空間。
微睡む様に瞳を潤ませながら、少女は少しずつ身体を横倒しにしていく。
そして、完全に横になり――目を閉じた。
しばらくして、静かな呼吸音が始まる。
背もたれ部分の少し斜め後ろにいた執事は、
「おや」と、僅かに声を漏らし、ソファーの前へと回った。
少女は、絹のような髪を頬と額の上で少しだけ乱し、寝息を立てている。
暖炉の暖かさで滲んだ汗が、頬から唇へと流れ、髪の毛をまとわりつかせていた。
その艶かしさに青年は、少女が紛れも無く『女』である事を思い出してしまう
それでも、あどけない表情で眠る少女に、執事は思わず表情を緩めた。
ソファーの前で跪き、優しく少女の頬を撫でる。
そうやって、張り付いた彼女の髪の毛を整えていると――少女が、小さく執事の名を呼んだ。
一瞬だけ、執事の手が止まるが――再び聞こえてくる寝息に、彼は破顔してそれを続けた。
執事が立ち上がる。
主を起こす前に、おそらくはメイドの誰かに、少女のベッドメイクの手配でもするのだろう。
音を立てぬよう細心の注意を払いながら、執事は部屋を発った
一人残され、ソファーで横たわっていた少女の寝息が、不意に止まった。
瞼がゆっくりと開き――姿勢は動かさないまま、少女は執事が閉めた扉を見つめる。
「頬に接吻けくらい、してくれたっていいのに……」
一度だけ、そう嘆息して――
近づく靴音に気づき、また瞼を落とした。




