第四話 「菓子」
---------------------------------------------------------------
Tea time.4
The girl's aesthetics are reflected in sweet cakes.
---------------------------------------------------------------
「甘っ……悪くないけど、ちょっと甘すぎね、コレ」
いつもよりシロップの装飾が多い、そのクッキーを口にして、少女は思わずそう呟いた。
急いで砂糖を入れていない紅茶を飲み干すと、横で控えていた執事によって、すぐにそのカップに新たな茶が注がれる。
「お気に召しませんでしたか?」
「ううん……美味しい、不味いで聞かれれば、それは決まってるんだけど」
味に関していえば、合格点には違いない。ただ、この甘さは酷く刺々しい。
「お嬢様は、大の甘党だと記憶していたのですが」
「それはそうなんだけど……直接的な砂糖の甘さはちょっと、ね。
作る過程に砂糖やシロップを入れるのはわかるんだけど……。
出来上がったお菓子に改めてかけてしまうのは、お菓子を楽しんでるのか、ただ甘さを楽しんでるのか分からなくなってしまうもの」
小さなこだわり。だが、そんな些細なことが、少女の美学。
執事の頬が緩む。彼女に仕える事を、また、これで誇れる気がする。
「なるほど……作り手のメイドに伝えておきましょう」
「お願いね。そうだ……ねぇ、知ってる?わたしの味への嗜好と、異性への嗜好がとっても似てるって」
きょとんとする執事の胸に、自らの背中から寄りかかり、まるで身に着けるかのように、その手を取って、自分の体の前で組ませた。
執事が、少女を後ろから抱きしめているように、見えなくもない。
その腕に、擦り寄りながら、少女は言った。
「ほら、お菓子は口を。貴方は心を。同じもので満たしてくれる――」
求めるものは、『深さ』と『甘さ』