第四十二話 「暖炉」
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Tea time.42
Her kindness creates a world of warmth.
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暖炉に火を入れる。
暖かさが広がり、悴んでいた指先にも温もりが染み渡った。
次にこの部屋に入ってきた人も、きっとその空気の優しさに、表情が緩むはずだ。
自分の仕事というわけではない。
ただ、一番初めに部屋に来た者がそうすると、暗黙の了解になっていた。
正直に言えば、この冷たさに震えながら暖炉を入れるのは辛い。
それにたとえ自分がやらなくても、きっと「誰か」がやってくれるに違いない
でも、誰よりも早く起きるだけで。
その最初の一人になるだけで。
あたしが大好きな、この館のお馬鹿さん達――
その「誰か」を温かさで迎えられるのなら、そんな素敵な贅沢はないと思う。
さあ、ドアの向こうから彼の規則正しい足音が聞こえてきた。
今日はどんな一日になるのだろう――
「おはよう」 の一言とともに、そんなことを考えてみる。




