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執事さんとお嬢様 ~甘党の為のお茶会~  作者: ぐったり騎士
執事さんとお嬢様

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44/70

第三十七話 「来賓」

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 Tea time.37

  Tree Of Pet Cemetery.

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 猫が、横たわっている。

 

 いつかこの館に迷い込み、その後も何度か訪れていた、あの猫だ。

 何があったのかわからないが、ほんの少し前、やせ細った体を震わせて足を引き摺りながら少女の前に表れた。


 

 今は、少女のベッドの上。

 

 少女の寝室に入り込み、にゃあ、と一度短く鳴いた後、彼――それとも彼女だろうか、その猫はベッドに飛び乗って、そのまま動かなくなった。

 

 

 すでに呼吸は止まっており、その身体は死の感触しか伝えてこない。

 横に座る少女が、冷たくなったその毛並を静かに撫で続けている。


 執事やメイドが、早々の元に片付けようとしたが――少女はそれを止めていた。

 

 

 己の死を隠したがるという存在ねこが、最後の場所をここに選んだのなら、きっとそれに理由はあったのよ、と。



 それは、単なる自己満足かもしれない。

 でも、だからこそ、本当の意味で悼み、安らかなる事を祈れると思う。

 

 

「この子、木の根元に埋めてあげましょう?」



 撫で続けていた少女の手が止まり、自らの腕で、抱えあげる。

 

 少女が、本来穢れとされる死を抱くことを――執事も、メイドも止めない。

 

 ただ、ゆっくりと頷いた。

 

 

 

 

 館の敷地にある一本の木の下に、僅かに土が盛り上がった場所がある。

 

 そこに、特別な意味があるわけではない。

 「それ」のことを知っている者も、改めて祈りを捧げる事はないだろう。


 

 その者は、ほんの僅かな間、この館に来訪していた正客で――

 つまりは、幾多の来賓者の中の一人でしかないのだから

 

 去り逝くのなら――それはもう過去のこと。

 

 館は、いつでも次なる来賓のために動いている。

 

 そこには稀に、小さな花が置かれる事もある――ただそれだけの場所。

15日8時、17時にそれぞれ投下予約済み

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