第二十七話 「装飾」
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Tea time.27
True adornments beautify not the face but the mind.
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夢。
青年は夢を見ている――
汚れても傷ついても懸命に生きようとする、一匹の猫の夢を。
きっと彼女には、淡い小さなブローチが似合う。
煌びやかなドレスも良いだろう。
清楚に着飾れば、その美しさに目を奪われ、
豪華に宝石を身に纏えば、手厚く迎えられ、
艶やかに唇と肌に朱を引けば、男達が色に迷う。
だが、柔らかな指先が選ぶのは、
鈍い光沢の調理具と、すす汚れた箒に、大きな水桶。
傷と埃。
そして泥が彼女に重ねられていく。
それでも――働く彼女の姿は美しく。
ならば、使う度にくすんでいっても
飾りとしては合格だ。
彼女が笑えば誰かが笑う。
そして彼女が本当に笑う。
笑顔の上を伝う汗が、彼女の最高の化粧となる。
「喜んでくれるあなたのために、あたしは、今日より美味しいものをつくりたい」




