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 幕間4   「雛鳥は鳥篭から空を見る」

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 Intermission.4

  I long to meet you again and hear your voice once more.

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「なんだ……。君は、それだけのことで自分には自由がないと思ったのか?」


 男が笑う。


「牢獄に監禁されるでもない。手足を失ったわけでもない。ただ、一人で生きる(すべ)を知らず、知ったところでそれをする勇気もないだけだろうに」



 そんなのは、何処の子供も同じだろう、と。

 彼は作成していた書類から離れると、ぽん、と少女の頭に手を置いた。



「扉が開いたままの鳥篭で、餌がもらえないからと逃げ出さない小鳥は、閉じ込められているとは言わない。檻の内と外、どちら側で生きるのかを選べるのだから」



 そして、どちらで生きるのか、その決断をいつか自ら行うために、子供は学び、成長するのだ、と。

 少女の父の行う様々な国との商談の為に、通訳として臨時で雇われたこの異国の男は、子供に対する嘲りではなく、ただ諭すようにそう言った。



 それは粗雑な口調だったが、不思議と嫌な気分はしない。

 一つ一つの言葉が、導いてくれる。


 今まで、なんとなく怖いと……契約最終日の今日まで彼を避けていた自分が悔しい。




「あ……」



 時計の鐘が、三度なった。少女の、休憩時間が終る。

 また、あの退屈な学習、稽古事の時間の始まりだ。



「あ、あのっ! 最後に一つ……聞いても良い?」



 少女に背を向け、また資料作成に没頭していた彼は、振り返らずに手だけ振って、どうぞと伝える。



「わ、わたしが……」


「……?」


「わたしが貴方を雇う、と言ったら……貴方は私に仕えてくれますか?」


「――!」



 少女の問いかけに、青年は少し驚いたように振り返った後、彼は何かを思い出すかのように目を閉じて、そして再び少女を見つめる。


「……」


 その無言の間、青年は何を思ったのだろうか。

 ただ、なぜかその瞳には、懐郷と哀しさが混じっていたように、少女は思う。

 

 そして――



「……君が、君自身の手で得た金で私を雇うというのなら、真剣に考えよう」


 やわらかい返答。

 そして、少女が始めて見た、青年の微笑み。


 そして、少女は決意する



「今は無理でも、近い未来に。

 わたしが、貴方の前で自分を誇れるその日に、きっと」

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