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第二十話 「帰宅」
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Tea time.20
Who said “Welcome home” to me?
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何気なく館を見上げる。
それは当然自分のものではなく、
世間的に言えば、職場というだけでしかない。
それでも、中から漏れる光は暖かく。
自分を迎え入れてくれるのだ、と安堵する。
帰ってきたと思える場所。
それが、『家』であるための、たった一つの条件だろう。
「おかえりなさい、ご苦労様」
彼女が出迎えてくれる。
少し煤けたメイド服からは、焼きたてのパイの匂いがしている。
暖かいのは、館の灯りだけではなさそうだ。




