第十八話 「困惑」
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Tea time.18
Like or Love?
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「貴方は、ずるいわ」
「……なにか、私に不手際がありましたでしょうか」
「わたしがどんなに望んでも、貴方はいつだって、手と頬にしか、接吻けてくれない」
「……申し訳ありません」
「謝って欲しいわけじゃない。それは、貴方が本気にはなってくれないということだから。……でも、わたしはっ!」
危うく、契約を破りそうになる瞬間、少女は彼に抱きしめられる。
心が込められた本気の――ただし、力強い恋人のそれではなく、あくまで優しい、親愛の抱擁。
それが本心なのか、あくまで主従の立場ゆえ偽っているのかは、少女にはわからない。
問うたとしても、きっと執事は困ったように微笑むだけだ。
「……いつも、そうすれば、わたしが大人しくなると思ってる」
そして……貴方の思い通りになってしまう――。
「たから、ずるいって言ったのよ……」
寄り添った胸から伝わる暖かさと鼓動にまどろみながら、彼女は悔しそうに執事の服を噛んだ。




