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第一話   「日常」

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 Tea time.1

  An event at midnight.

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 小さな音がする。



 無機物が擦れ合う冷たい音。


 だが、時計の刻む規則的な音とは異なり、そこには確かな人の意思があった。



「どうしたの? こんな時間に照明の手入れなどして」



 突然の少女の声に驚いたのか、ほんの僅かに肩を震わせ、その男はゆっくりと振り向いた。



「お嬢様……申し訳ありません。起してしまいましたか?」


「いいえ、起きたのも、ここを通ったのも、たまたまなのだけれど。音がしたから気になって」


 照明具から手を離したその男に、少女は「続けていいわよ」と呟く。


「……ええ、最近これだけ調子が悪いようでして。……よし、とりあえずですが点くようになりました」


「何も今でなくても、いいと思うのだけれど。昼間の方が明るいし、そもそも執事である貴方の仕事ではないでしょう」



 そうですね、と青年は頷く。


 館の備品の管理や確認そのものは男の仕事だが、「直す」のは別の人間の仕事だろう。



「確かに作業という点ではそうです。しかし、私の役目は、この館と、お嬢様の日常を守る事です。

 成長という変化を拒絶する事は愚かですが、昨日と同じ今日を守ることは、大切だと思うのです」



 この廊下は、毎朝少女が通り、そして当たり前のように柔らかな光が彼女を導いている。

 ただそれだけのことではあるが――青年には、守るべき日常だ。



「貴方も几帳面ね。とても、緑色のお茶を飲む人とは思えないわ」


「私の故郷では、一般的なのですが……」


「わたしはそろそろ眠るわ、貴方も早く休みなさい」


「ありがとうございます。お休みなさいませ……どうなさいましたか?」



 なかなか立ち去ろうとしない自分の主に、青年は戸惑いながらそう問うと、少女はくすりと笑って



「日常は大事かもしれないけれど……でも、今夜貴方と逢瀬できたのは、日常が守られなかった(ハプニングの)おかげでしょ?」


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