第十四話 「酒宴」
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Tea time.14
Does she have a happy dream by drinking the wine?
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「あなたは、あまり飲まないのね」
「明日に響くからな。酒の匂いをさせてお嬢様に仕えるわけにもいかないだろう」
そう答えた執事と、同じ館でメイドとして働く彼女。
この執事にべったりで、メイドの彼女とも仲の良い、皆がお嬢様と呼ぶ少女を、なんとなくグラスに思い浮かべる。
「……相変わらず、あなたの中心は、あの子なのね」
「ただのマナーと、仕え働く者の常識の問題だ。それに、私は君のように酒に強くない」
「そう言う割には、水で割らないじゃない。弱いくせに、アルコールが高いのが好みなの?」
「いや、これは単に私のこだわりの問題だな」
「こだわり?」
「酒が強いからと水で薄めて飲むのは、幸せを薄めているのと同じ気がするだけだ。その酒が無理なら、自分に合った、種類の違う酒を探せば良い」
「ふぅん……それで、今の生活は、あなたにはどんなお酒?……あたしには、ずいぶんとアルコールも刺激も低そうに見えるけど」
「確かに……少し足りないな。だが、だからこそ十分だ」
「そう……」
彼女は、乾したグラスの氷を軽くまわした。
「寒いわね。温かい紅茶でも飲もうかな……」
「アルコールはもういいのか? 君にしては珍しい」
「そんなことはないわ。まだ酔いたいもの。でも――」
軽く、執事の肩にしなだれかかる彼女。
「どうせなら、足りない分は貴方で酔いたいの」




