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検定意見          :約2000文字

作者: 雉白書屋
掲載日:2026/05/21

 ぼくの日よう日

 一年一くみ 小林けんた


 この前の日よう日は、とてもいい天気でした。空はまっ青で、くもはわたあめみたいにふわふわしていました。風もやさしくて、木のはっぱがさらさらと音をたてていました。ぼくはなんだかうれしくなって、さんぽに行くことにしました。


 ぼくには、すきな道があります。それは、パンやさんのある道です。

 その道に近づくと、いつもふわっといいにおいがしてきます。パンみたいな、すこしあまくてあたたかいにおいです。おなかの中までぽかぽかする気がして、ぼくはそのにおいが大すきでした。

 しかも、そのパンやさんは、おなじ一年生のおともだちのいえです。だから、ほかのお店より、なんだかちょっととくべつなかんじがします。おみせのおばさんはやさしくて、たまに小さなクロワッサンをいっこおまけしてくれることがありました。

 その日はおこづかいをもっていたので、おいしそうなパンをかっていこうと思いました。なにパンがいいかな。あんぱんかな。それともチョココロネかな。なにをかおうか考えながら歩いていると、おなかがぐうっとなりそうになりました。


 でも、パンやさんはありませんでした。


 かわりに、おじいちゃんちみたいなにおいのするおかしやさんがありました。ふるい本みたいなにおいです。

 おみせの形はおなじなのに、ガラスのむこうにならんでいるのはパンじゃなくて、いろんないろのおかしでした。まるいものや、はっぱみたいな形のものや、ゼリーみたいなものもありました。


「やあ、いろんな色や形のお菓子があるだろう? どうだい、きれいだろう。これは日本のお菓子で、和菓子というんだよ。秋になると柿や栗のお菓子も作るんだ」


 ぼくが見ていると、おみせのおじいさんが出てきて、にこにこしながら話しかけてきました。

 ぼくはちょっとびっくりしたけど、きいてみました。


「パンやさんはどうしたんですか?」


「おいしい栗まんじゅうを買っていくといいよ。おじさんね、いつも買いに来てくれる地域の人たちのためにも頑張ろうと思うんだ。これからも日本の味を伝えていきたいからね」


 おじいさんはそう言って、ぼくにくりまんじゅうをおしつけてきました。ぼくはことわりきれなくて、それをかってしまいました。くりまんじゅうはいいにおいがしたけど、パンよりもずっと小さかったです。


 ぼくは、なんだかもやもやしながら歩き出しました。

 すこし歩くと、いつもあそぶ公園につきました。ぼくはこの公園が大すきです。サッカーをしたり、アスレチックであそんだり、友だちとおにごっこしたりします。

 でも、その日はへんでした。

 公園の入口にはきいろのテープがたくさんはられていて、中に入れなくなっていました。ブランコもすべり台も、なんだか遠くにあるみたいでした。


「ぼうや、どうしたんだい?」


 テープにさわって中をのぞきこんでいると、うしろから声がしました。

 ふりかえると、近くの家からおじいさんが出てきました。ぼくが、「公園に入れないんです」と言うと、おじいさんはうんうんうなずきました。


「そうか。それなら、琴を教えてあげよう」


「は?」


 ぼくがびっくりしているうちに、おじいさんはぼくのうでをつかみ、ぐいっと家の中へ引っぱりました。

 ことは、木でできたながいがっきでした。つめみたいなものをゆびにつけて、糸をはじくと、ぽろんって音がしました。おじいさんは「こうやるんだ」「よく見なさい」「もっと心をこめて」と言って、ひきかたをおしえてきました。

 でも、ぼくにはよくわからなかったし、つまらなかったです。

 すると、おじいさんはぼくがつまらないと思っていることに気づいたみたいで、かおにしわがいっぱいよっていました。


「もっと我が国や郷土の文化と生活に親しみと愛着を持ちなさい。現在の生活を築いてくれた高齢者に尊敬と感謝の気持ちを持って接するんだ。君にはそれが足りないよ」


 おこられました。あっ、いわれました。

 ぼくは「ごめんなさい」と言って、おじいさんの家を出ました。


 それからぼくは、パンやさんをさがして町の中をぐるぐる歩きました。でも、どこにもありませんでした。かわりに、どこもあんこやさんになっていました。


「あんこはいいよ。日本の味だからね」


 おみせの前でちょっと立ち止まったら、あんこやのおじいさんが話しかけてきました。

 だから、ぼくはききました。


「どうして? どうしてパンやさんはなくなったの?」


「伝統と文化を尊重する態度、国や郷土を愛する態度が欠けているのは不適切だからだよ」


 ぼくにはよくわかりませんでした。

 この町で、いったい何がおきているんでしょう。

 ぼくはもっと知りたいと思いました。

 パンやさんにもどってきてほしいと思いました。

 いやなおじいさんはいやだなと思いました。

 おしまい。



 ……えっ、ふてきせつってなんですか? 

 いたい、いたい、やめて、せんせい。

 やめて。

 どこへつれていくの? やめて――

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