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乙女ゲームに転生したので、目移りすることなく婚約者を愛していたら、逆に婚約者の方が愛されヒロインになりました!?【2000文字】

作者: 有梨束
掲載日:2026/02/11

婚約者のフィオナと初めて会った時、ここは乙女ゲームの世界だと思った。

前世で交通事故に遭って、一緒に亡くなった女性がいたと記憶しているが、その人が地面の上で呟いた声を鮮明に思い出したからだ。


『フィオナの婚約者…、まだ攻略できていなかったのに…』


こんな時までゲームかい、と思いながら僕は死んだんだった。



その『フィオナ』が目の前にいる彼女なんだとしたら、僕は攻略対象者ということになる。

8歳で同い年のフィオナは、引っ込み思案で、オドオドしていた。

もしヒロインに婚約者を奪われる側なんだとしたら、不憫なくらい弱々しくて、申立ても出来ずに婚約破棄されたんだろうなというような少女だった。

そのフィオナを見て、僕はまだ仕出かしていないというのに、胃が痛くなった。

こんな弱気な少女に、そんな未来をお見舞いするのは、初対面とはいえ気が引けた。

何より、今日からは僕の婚約者なのだ。

生涯を共にする人だ。

だったら、ヒロインにかまけることなく、フィオナを愛するのが僕のすべきことだ。


「今日も可愛いね、フィオナ」

「うふふ。私が可愛いというのなら、それはエリク様にそう言ってくださるからですわ」

あれから、8年。

僕たちが学園に通う頃には、フィオナはすっかり変わっていた。

たおやかに微笑み、凛としていながらも、時々少女のように可愛らしい。

元のフィオナはどう成長して学園に通うことになったのかは知らないが、僕の知っているフィオナは貴族令嬢にふさわしく成長した。

僕の横で毅然と立ち、次期侯爵家の女主人になるべく邁進している。


僕は会うたびに「今日も素敵だね」「可愛いね」「フィオナにいい夫だと思ってもらえるように頑張るからね」とひたすら安心させるような言葉を紡いできた。

誕生日、婚約記念日なんかはもちろん、ことあるごとに贈り物をしたり、手紙を書いたり、ダンスやエスコートもフィオナカスタマイズにしていった。


「隣に立ちたいと思ってもらえるような男になるのは、僕のすべきことだよ」

これを言ったのは、10歳の時だったと思う。

フィオナはそれに甚く感動して、目を輝かせた。

「私、もううじうじしませんわ。エリク様に相応しいレディになってみせます!」

それからというもの、フィオナは本当に変わった。

元々優秀だったのだろうけど、僕が揺るがずそばにいるという安心感がよかったのか、他の女性からも憧れられるような淑女になった。


「エリク様との学園生活、楽しみです」

「僕も今までよりフィオナと一緒にいられると思うと嬉しいな」

「まあ」

頬を染めて、微笑んでいる。

うん、僕の婚約者はこんなにかわいく立派になりました。

あとは、僕がヒロインとやらに負けなければいいだけだな。


だが、その心配は実現せず、むしろ違う事態を引き起こした。


「フィオナ嬢、お荷物お持ちしますよ」

「え、っと」

「フィオナ嬢、よかったら私と観劇などいかがですか?」

「あのっ」

「フィオナ嬢、今度演習があるのです。ぜひ応援に来ていただけませんか?」

「ですから」

「待て待て待てっ!僕の婚約者を口説くのはやめろ!」


どうしてこうなったんだ…。


入学してすぐ、他の攻略者と思われる人物たちから、まるでヒロインかのような扱いをフィオナがされるようになった。

本当にいい加減にしてくれ。

「ちょっと!なんでその悪役令嬢にみんないっちゃうんですかっ!?私の貴族慣れしていない天真爛漫なところに惹かれるはずでしょ!」

ほら、真のヒロインがああ言っているぞ。

つか、あっちも転生者かいな。

「そんな女どこにでもいるじゃないですかっ!」

「フィオナは僕の素晴らしい婚約者だ。そのような発言は控えていただきたい」

「エリク様まで…」

いや、僕は最初からフィオナ一筋だぞ。

「そうだぞ、こんなに美しい女性は他にいない」

「君と違って貴族の在り方を立派に体現されている」

「まさに理想の『婚約者』だ」

全面同意だが、お前らが言うな。

ああ、もうっ、僕がフィオナを愛しまくったから、魅力的に見えるようになったのか!?

なんだこの事態は…!

「私が素晴らしいと言うのなら、それはエリク様が私を大事にしてくださるからですわ」

「フィオナ」

「そして隣に立ちたいのは、今も昔もエリク様だけです」

そう言って僕の方だけを見て、微笑んだ。

ああ、もう僕の方が敵わないんだから。

「ほう…」

「綺麗だ…」

「フィオナ嬢…」

…うるさいぞ、攻略者ども。

僕のフィオナにこれ以上構ってくれるな。

「君に相応しい人になれているかな」

「私がいつまでも追いつけないくらいですわ」

「フィオナがそばにいてくれるからだね、大好きだよフィオナ」

「私もです、エリク様」

僕のフィオナだからな!

誰にもやらんぞ。

「フィオナ嬢に認めてもらうべく、精進してきますね!」

「「そうしますっ!」」

「そうじゃない…っ!」

僕の叫びに重なるように、真のヒロインも叫んだ。

「こんなの聞いてな〜〜〜〜いっ!!!」


…全く、その通りである。勘弁してくれ。



お読みくださりありがとうございます! 毎日投稿42日目。

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