空いた時間には休息を ---松下真広編---
霧神学園に所属する生徒。 松下真広は家では人間として扱われていなかった…
義父から玩具にされることを嫌いこの学園に入学すると同時に一人暮らしを始める。
彼女にとっての休息は学園にいる時間と彼を眺めている時間だけだった…
「いやっ…!やめてっ…」
「そんな抵抗するなよ。満足したら、やめてやるからさ…っ」
…
いきなり頭に流れてきた嫌な記憶で目が覚める。
また、あの日の夢だ。
家にいると時々…いや結構な頻度であの時のことがフラッシュバックしてくる
最悪な思い出だ
私が中学1年生のころ母は再婚した。
もともとシングルで育ててくれていたからその時は私も母が幸せならそれでいいと考え、特に義父ができるのことについて不信感も抱かなかった。
あの男が家にきて半年後くらいかな…
私はあの男の玩具になった。
母は気づいていなかったか、それとも気づいてあえて無視していたのか私にはわからなかった。
ただ1つわかることと言えば…
「家から早く出よう…」
[家]と言う概念は私にとっては苦痛の概念でしかなくなったことだ
いつもと同じようになるべく早く用意をすませ足早に玄関から出ていく
住んでいるマンションから出て公道に足をつける。
ふと前を見ると遠くの方によく見る後ろ姿が歩いていた…
彼は同じクラスで委員会の宮川太陽さん
同じマンションに住んでいるから彼の姿は学校以外でもよくみることだ
なぜか彼だけは話していても嫌な気持ちにならなかった。
普通なら男の人と言うだけでとても気持ちが悪く思えるのに
学園に着いてからはいつものキャラを徹底する
なるべく才女でいることを意識する
そうすると自然と男の人も近寄りづらい雰囲気にもなるし。
学園が息抜きなのにそれすらも壊されたくはなかった。
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ようやく今日の授業が終了し、帰る支度をすませる。
いつものように友人と談笑しちょうど良いところで切り上げて帰路に着くことにした
ただ家に向かって黙々と歩いていると背後からなぜか人の気配がしていることに気がついた。
ストーカーかと思い足が震えてしまっていたが勇気を出して後ろを振り返ると…
「宮川さん後ろにくっついてこないでくれません…?」
私はなるべく平静を装ってそう話しかける
「ごめん…ぼーっとしてて前見てなかった」
「マンションが同じだとはいえぴったりくっつかれては困ってしまいます」
「ごめん次は気を付けるよ」
やけに素直に謝る彼がとても可愛らしく見えたから少しからかいたくなった
「次ってまた尾行もどきでもするつもりですか?」
「そう言ったつもりは…!」
「ふふっ、冗談ですよせっかくですから一緒に帰りましょ?」
そう提案して同じマンションに向かって足を進める。
彼と話した内容はとてもどうでもいいことのようで、それでも大切な内容だった気がした。
いや、
もしかしたら彼との会話内容より一緒に帰っていた時間が大切なのではないかと家に着き彼と別れた後そう考えはじめた。
「やっぱりいい人だったな…また話したい、ね」
この日は何故か過去の記憶が溢れでてくることはなかった。
~~~~~~~~~
今日も1日しっかりと自分をこなせたと思うし調子もよかった。
ただ、予想外なことに5限目辺りから予報にもなかった雨が降り始めて私の気分は下がってきていた
傘持ってないのに…
下駄箱でそんなことを考えながら外を見ていると彼がいきなり話しかけてきた
「よかったらこの傘貸すよ。」
そう言いながら彼は傘を私に差し出してきた
「嬉しいですけど…宮川さんは傘あるんですか?」
「まぁないけど家まで近いし走ってく」
「…家って私と同じですよね?歩いて20分はかかるのが早いんですか?」
「……早いです、」
「貸してくれようとするのは嬉しいですけどそれで風邪を引かれては目覚めが良くありません。」
「まぁ、体は丈夫な方だし行ける行ける」
「…なら一緒に帰りませんか?途中のコンビニで傘買いたいのでそこまでは。どうです?」
私はこの雨にとても感謝をした。
先ほどの私はこの雨を鬱陶しくおもってたろうに。
「まぁそれでいいならそうしよう」
彼のその返事に私は心が踊っているきがした
「宮川さん肩濡れてますよ?入れさせてもらってる身なのでこっちばかりしなくていいですから…」
私ばかりを気にしてくれるのはありがたいけど風邪を引かれてはさすがに困る
「まぁ、体は丈夫っていったから平気だよ」
「なら…ありがたく」
なぜだろう?とても暖かみを感じる。
私はここにいていいんだと。
居場所はあるんだと思えた
私の顔は今どうなっているのだろう
目頭がほのかに熱い
気になってしょうがない。
彼の顔をなぜか恥ずかしくて見ることができなくなっていた
そうこうしているうちにコンビニに着いてしまった
「少し待ってて下さい。傘を買ってきますから」
私はそう言い火照った顔を隠すように足早に店内に入る
ビニール傘を手に取りお会計をすませようとしたところ見たことのある男がこちらに近づいてきた。
「見つけたぞ!!お前らみたいな分際で俺に隠し事しやがって!!」
「あっ…」
義父だ…
私が逃げようと考えてたことも、私の場所も知られてしまった
でも私には居場所があるから…!そこにいけば
………
耳を裂くような轟音が聞こえた。
それと同時に店内に入ってきた彼が倒れた
「えっ…うそ、?」
声がはっきりとでない
頭がまわらない
「こんな男とつるんでるからか!?お前が反抗的になったのは!?なぁ!!」
声にならない泣き声ばかり私はあげていた
周りの人は警察に通報してくれていたのだろうか
彼の目がだんだんと閉じてゆく
体は丈夫って…言ってくれたのに
居場所が崩れていく音がした。
コイツのせいで、
コイツさえ、
……
……
隣には彼がいる。
まだ居場所はあるだろうか
これにて休息を終了させていただきたいと思います
シリーズ?をご覧いただきありがとうございました。
彼女は居場所を見つけられる環境にいるんでしょうかね