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【エッセイ】どうして書けなくなったのか

作者: 菜乃ひめ可


上手く表現できない。

自分の中でなにかが変われば……


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こちらは【2024年09月28日】当時に

思ったことを書いたエッセイです。

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 小説を書き始めて三年が過ぎた。


 最初は何も考えないで思いついた言葉でただ書いて書いて物語を作り上げるだけで、それで楽しかった。


 読んでくれる人がいるPV数とかも当時は知らず気にも留めていなかった。


 しばらく書いていると「誰かに読んでもらいたい」と思うようになる。


 誰にも言わずに始めた執筆活動を近くにいる人、小説を普段読むよ、と言う友人に頼んで読んでもらう。でも、みんな優しいから「読んだよ」「面白いよ」「あなたらしいね」と、プラスな反応をくれた。


 ありがたい、時間がないのに少しでも読んでくれて本当にありがたかった。でもそれは頼んだ時だけでもちろんずっと読み続けてもらえたわけではない。


 その時それがみんなからの【答え】だな、と実感した。


 同時に自分が楽しいだけじゃダメなのだと気付く。それは自己満足なだけと解り、書き方から情景描写、表現の仕方に変化をつけて、自分の書く文章で物語の光景をもっとイメージしやすい様に描く努力をした。


 言葉遣いや漢字も、日本語の使い方も、出来るだけ正しく使わなきゃいけない気がして、自分なりに調べて、やれるだけ誤字脱字を無くして、文章の書き方ばかりを気にし始めていた。


 そのうち“数字”での評価があると分かると、今度はそれがとても気になり時間があると反応を見てしまう。無名で流行りの作品を書けない私が投稿しても読んでくれてる人数は少なかったが、今日はいつもより増えた、など一喜一憂だ。


 比べても仕方ないのに、比べるなんておこがましいのに、人気作品の数字を見て驚き、住む世界が違うのだと愕然としたり。


 ジャンルや方向性に迷う。

 そしてますます読まれることの少ない自身の描く物語を、私はどうして書いているのだろう? と悩んだ。なんで書き始めたのだろう、どこがダメなのだろう、そもそも自分の書いているこれは小説と言えるものなのだろうか、書いて先の未来にどうなりたかったのだろう、と。


 始めは、そんなに深く考えてなどなかった。

 憧れた作品に感化され、ただ、ただ、自分も思い描いた話を書きたかっただけだ。最初にここへ文字を打った瞬間は、わくわくしていた。溢れてくる一文字一文字を軽快に書いた六百文字程度は、今思えば勢いだったのかもしれない。それでも、次の話を書くのが楽しみで仕方なかった。


 でも続けていくうちに、色々と学び、一番大切にしていたはずの【楽しい】はなぜか『小説の書き方』などの次になり、そのうち楽しいだけの思いはどこかへと消えてしまいそうになっていった。


 しかし、そうこうして懸命に勉強し書き進めた小説は、いつしか「キャラクターが動いてる!」「絵がついたらいいのに!」「あの表現がとても好き」と、そんな嬉しい言葉をもらえたりもした。


 一瞬でも、自分の努力が実ったんじゃないかって気がして幸せな気持ちになり、成長したのかもしれないと錯覚する。なぜ、そう思うかといえば、本当の所、今自分がどんなふうになっているのかが、測れないからである。


 では、私がこれから目指すものは一体何だろう。


 ここ数ヶ月は、文字を書く(打つ)のがとにかく遅い。浮かんだ話を書き始めてもすぐに考え込み、サラサラと書けない。こうしたらこうなってこうなる、ここの表現は適切か、接続詞はおかしくないか、読みづらくないか、矛盾はないか……と色々思うと、手が止まる。


 そんな考えてばかりの物語を、読む人が「楽しい、面白い」と感じるだろうか。そんなに四角四面に言葉を選んだりして書いた文章が、果たして最後まで興味を持って読んでもらえるのだろうか。


 これは、小説を書くうえで大切な心と、小説を書くうえで大切な書き方との、バランスさえうまくとれれば、悩みは解消されるのかもしれないけれど。


 昔、言われたことがある。

「考えたり、悩んだりして中途半端に終わらせてしまうな。そこで立ち止まって時間が足りなくなるより、まずはそれを最後まで仕上がるように進めなさい」と。そこから後で修正し、手を加えて、時間の限り納得のいくよう完成させるのだというアドバイスだった。


 そういえばそうだった。こうして書いていて、これは今の自分にぴったりな言葉だなと改めて理解した自分がいる。


 私はこの『とりあえず』というのがなかなか苦手で出来ないらしく、何をするにも取り掛かりも遅く、始めて乗れば早い。調子が良ければ、最後まですすすーっとリズムよく作業が終わる時もある。しかし途中で何かが引っかかり、気になって止まると、そこでとことん追求する傾向がある。


 それとこれと小説が書けないことに何が関係があるのかと言われれば、それもうまく説明できる自信はないが。


 ただ言えることは、いつも浮かんだ物語はすでに最後を決めているということ。小説を書く時、書く方の大半はそうなのかもしれないが、書き始める時にはもう結末を頭の中で作れているのだ。にも関わらず、途中の話が膨らみ過ぎて描きたいことが増えてしまい、話の最後になかなか辿り着けない。


 だから、遅い。

 なかなか完結できない。


 本当は、一度その物語を書ききってから、手直しをするべきなのだと今は心から思う。でなければ、いつまでも不完全燃焼な状態になりそうだからだ。


 そして、思うように文章が書けなくなった今、完結の時期も決められずに時間だけが過ぎてゆく。


 焦る。

 せっかく読んで下さる方が一人でもいてくれるのに、書けなくなる自分が不甲斐なく、続きも遅くて申し訳ないという気持ちになる。


――どうして書けなくなったのか。


 今ここにいるちっぽけな自分が出した答えは『もっともっと上手く、ちゃんとした小説を書かなければ』ということにとらわれ過ぎて、書くことに対して自信が持てずにいる。


 だから楽しむことを後回しにして、せっかく思い浮かんだ素敵な物語も、自分なりに表現出来なくなって、文章化できなくて、考えてばかりいる。


 そして改めて、描いた結末をきちんと最後まで書ききってから世に出してこそ、一つの文学作品であり、小説といえるのだろうと当たり前のことを思った。


 そして今日も、画面に向かう。


 一文字でもいいから、もっと自分らしく描けるようにと。



最後までお読み下さりありがとうございました。

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