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覇権国家ハケモニア
ーハケモニア郊外ー
派遣社員のタダヨシは、本日も薬草採取の依頼に向かっている。
腰をかがめ、地面にへたり、草を掻き分け、やっと一房の薬草を見つける。
その繰り返し。繰り返し。
誰もやりたがらないから、派遣依頼掲示板には、いつもこの依頼は大量に残っている。
それをゴッソリこそげ取り、傷ついた誰かの為の薬草を探す旅に出る。
派遣になって7年、いつしかそれが、彼の生きがいになっていた。
「オレは、ヒーラーなんだ。ケガした仲間を、救うんだ。」
ふとした時に、彼はつぶやく。
彼に仲間はいない。
いたこともない。
しかし、彼にとっては、共に生きる生物全てが、仲間であった。
「ヒヒン、今日も大漁だ。」
まるで馬のようにブルりと呟く。
いつも1人でいるので、独り言は習慣になっていた。