雪山とかスキー場とかに出会いを求めるのって、難度高いと俺は思った
修学旅行がスキーってあり?
フツウ、京都とか広島とか、冬場なら沖縄じゃね?
担任が配ったプリントを見ながら、寒がりな俺は眉を顰めた。
「文句は先輩たちに言え。一昨年は関西地方に行ったが、現地で喧嘩して警察のお世話になったさ。じゃあ外国なら良かんべと韓国に行ったら、危うく国際問題に発展するトコだったからな」
俺が通っているのは有名な工業高校。
当然、悪名の方で。
いかにもヤンキー漫画に出てきそうな、いや、ウチの高校が漫画のモデルじゃないかっていう学校だ。
進学先を間違えたと思ったのは、入学式直後。
長ランの先輩たちが竹刀持って、一年の各クラスを回り、目立つ奴を連れ出して行ったっけ。
俺は電子回路を作ったり、パソコンを組み立てるのが好きだっただけで選んだが、以来ひたすら目立たぬ様に過ごしている。
「スキー場っていうのはな、女子大生のお姉ちゃんたちと、知り合う機会もあるぞ」
担任の適当な発言に、うおおお、という声が上がる。
ほぼほぼ男子校なので、女子と知り合う機会は貴重だよな。
「なあ、亮」
「何? 平井君」
俺は呼び捨てにされ、平井には「君」付け。
見事な力関係だ
「スノボでも良いかな。スキーって書いてあるけど」
「さあ……」
平井は呼び出した先輩を秒殺した強者。
スノボも出来るんだ。イケメンだし、ずるい!
ともかくも、バスに揺られて七時間。
電車だと駅で喧嘩する奴がいるから、バスだって。
真冬のスキー場に、俺たち二年生は向かった。
途中、雪が積もるサービスエリアでトイレ休憩となる。
トイレから出て戻る時、誰かとぶつかった。
「あ、ごめんなさい」
ちらつく雪に、ふわりとロングヘアが舞う。女子大生?
「あ、いや、別に」
「君、高校生?」
「はあ」
「何処行くの?」
「Dスキー場。しゅ、修学旅行で」
女性はにっこりして、一枚のチラシを渡す。
「良かったら来てね。待ってるわ」
手を振る彼女を見ていたら、後ろから平井が肩を叩いてきた。
「何? 逆ナン?」
「ち、ちが……」
どれどれと、平井はチラシを広げる。
そこには「海亀女子プロレス。Dスキー場大興行」と書いてあった。
「へえ。面白そうじゃん。夜抜け出して見に行こうぜ、亮」
朗らかな平井に、俺は曖昧に頷いた。
だが、初めてのスキーで足腰がガクガクした俺は、連日旅館で爆睡した。
俺の代わりに出かけた平井は、チラシをくれたお姉さんと、その後お付き合いするようになったそうだ。
俺の修学旅行の想い出は、雪山の眩しい白さだけ。
お読み下さいまして、ありがとうございます!!
ひょっとしたら、「これ俺の高校時代だ」と感じられる方が、いらっしゃるかもしれません。
フィクションでございます。お気になさらずにどうぞ。