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君がいた  作者: 南十字輝
8/9

勇気の扉の向こう側

午後2時。プロジェクトミーティングとは別に、小早川さんを部屋まで呼び出した。

次長も在室かつ、特に予定がないことを確認済みだ。


「失礼します。プロジェクトの件でしょうか?」

「ああ、違うんだ。そこに座って?」

私は立ち上がりにこやかにしながら、ミーティング用の椅子を指し示した。

それと同時に次長の方を向き伝えた。

「次長も一緒にお話に参加してほしいんだけどいいかな。」


なんとなしに次長、その隣に小早川さん、二人の向かい側に私が座った。

次長は話の内容に予測がつかず多少表情をこわばらせていた。

逆に小早川さんは業務上の何かの話だと思っているようで落ち着き払っている。


「こないだの土曜日にね、海沿いのイタリアンに行ったんだよね、私。妻と一緒に。」

なるべく私はほがらかな口調を意識して切り出してみた。

次長は完全にしまったという表情になり、目線が下を向いた。

小早川さんは一瞬きょとんとした後、その表情のままの言葉を発した。

「えー、部長いらっしゃったんですかー!私も行ったんですよその日ー!」

次長はその言い草と態度を見て更に全身を硬直させていた。


「あ。やっぱり小早川さんだったんだね、窓際にいたのそうじゃないかと思ったんだ。」

「そうなんですよー!あそこいい景色ですよね、私結構好きなんですよあの店!」

「そうなんだね。私もいい景色だと思ったよ。」

・・・君たちのおかげで味はわからなかったけどね。


私は押し黙っている次長に話しかけた。

「次長もいましたよね。」

「・・・・・はい。」

「小早川さんの隣りにいましたよね、確か。」

次長は何も答えなかった。首を縦にも横にも振らなかった。

小早川さんはその様子を神妙な面持ちで眺めていた。

その目線は不倫関係を思わせるようなものには感じ取れなかった。


「私、しゃべっていいですよね。ね?」

小早川さんは次長に話しかけた。

次長は小さくうなずいた。

小早川さんは私の方を見て、ざっくりと核心をいきなり話し出した。

「部長、私は次長の恋愛相談を聞いていました。」

「れ・・・れ!?」

「そうです恋愛相談です。かれこれ2年は聞いてます。」

「へえ・・・・・・」

「会社だと話せないんです、当事者いるので。それで休日にたまに会って話していました。」

「あ・・ああ~なるほど・・・・・」


待って、情報量が多いぞ。恋愛相談、当事者が社内にいる、かれこれ2年はその話が続いている。

それで話を聞くために休日に会っていた・・・・けどそれって別の疑惑をこうして生んでるけど・・・


「とりあえず二人が付き合っているわけじゃないんだね。」

「二人?ああ、私と次長がですか?ないですないです、私新婚ですよやだもう!」

「私はちょっと誤解をしていたよ。」

「すみませーん。気が付いていたらお店でご挨拶して、誤解が解けましたよね。」

私と小早川さんは誤解が解けてすっかり和やかにしていたけれど、そんな中次長は一人曇った顔をしていた。


「次長・・・大丈夫ですか?」

私は押し黙っている次長に声を掛けた。

「・・・はい。」

うーん大丈夫にはあまり見えない。完全に態度もおかしい。心を貝にしている、という表現がとてもしっくりくる状態になっている。

「部長、もうちょっと詳細を話してもいいですか?」

次長は小早川さんの一言を聞いた瞬間顔を上げて、小早川さんに怯えた表情を見せた。

小早川さんは次長の目を見て軽くうなずいた後はっきり言った。

「部長にも情報共有していただいた方が絶対いいです。」


私は頷いて、詳しい話を聞いた。




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