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君がいた  作者: 南十字輝
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新しいこと

「え、わたしですか?」

新しいプロジェクトに混ざってもらおうと思って私は自分の部下に声を掛けた。正確には大勢の部下の中からピックアップした、だろうか。

鳩が豆鉄砲みたいな反応をした彼女は喜ぶというよりは戸惑っているように見えた。

「えーと小早川さんは既に何か重たい仕事を持ってるんだっけ?」

「あ、いえ、そういうわけではないです。」

小早川さんは自分の顔の前でワイパーのように手をはためかせてわかりやすく否定してくれた。うーんこのわかりやすさ、今度のプロジェクトにぴったりだ。


新しいプロジェクトは三か月計画だ。いつもの仕事よりも早めの決断・行動の繰り返しをすることになりそうだった。そういう時いちいち指示を仰ぐような言動をしたり、いわゆるホウレンソウを自分都合で端折るような人材はなるべく避けたいのが本音だ。私は次長に相談しながら人選をした。


キックオフの会合を開催する前に、私は口頭でメンバー候補に声を掛けて行った。メールやチャットでもよかったのかもしれないけど、出来たら顔を見て反応を見たかった。

とりあえず候補の3人は問題なさそうだったのでそのままメンバーに入ってもらうことにした。


「こういうときにね、便利なんですよ。」

メンバーを選ぶ相談をした直後だった。曇りガラスの向こうからにしては通りの良い声がしたので顔を上げると、脇から顔をのぞかせた次長が見えた。私も思わず同じ方向、右側に首を傾けて次長に合わせてみた。

「私と部長が同じ部屋だと手っ取り早く人に聞かせられない話をしやすいんです。もし私の席が隣の大部屋だったりするとちょっと厄介です。席を立って部長の部屋に伺う度に察しのいい人達はざわついてしまうので。」

ああ、なるほどねー・・・と私は相槌を打った。

「私は3月まで大部屋にいました。大部屋の不明点についてご相談いただければ回答できると思います。」

「ありがとうございます、助かります。」

まあ確かに利便性はあるんだよね・・・私はまだどこかで諦め切れていない一人部屋ドリームをぼんやり心に残したまま、現実を見据えていた。


キックオフ会合はこの部屋で行う予定だ。プロジェクト期間中だけ、会議用のテーブルセットとホワイトボードを持ち込むつもりだ。場合によっては毎日ミーティングをすることになりそうだし、だったら直接話をしやすい環境を作ろうと思った。私は風通しをよくしたかった。


「どっちかというとこの部署は保守的なので、部長のやり方は新鮮だと皆感じるじゃないかと思います。」

「そう思ってもらえるといいな。」

さて新しい部署での初プロジェクト。どう転ぶか、私も楽しみだ。

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