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44. 性別は・・・です!?

※出産回になります。痛み表現などは出産ハイのフィリスの声以外はほぼ入れていません。本当の出産を重視し執筆すると叫び声だけになり会話がなくなる為、レオンの魔法により”和痛分娩風”になっております!とご承知おき下さいませ(笑)


 そして遂に、フィリスは出産の最終段階に入った。


 段々と思考が痛みに支配されそうになり、フィリスは出産後に漸く叶うであろう、”ご褒美旅行”の事しか考えられなくなった。

 この地獄のような痛みからの現実逃避、とも言うだろう。レオンの魔法で緩和されているとはいえ、痛いものは痛い。


 大丈夫よ、フィリス。

 妊娠が発覚した時からずっと、この契約が終われば自由に旅行できるって自分を励ましてきたじゃない!もうひと踏ん張りなのよ、頑張れるわッ!


「う"りゃぁあぁぁあ、これで初期契約は達成なのだわあぁ!!私の自由ッ!旅行おぉ······、い、い"だい"ぃぃ、」

「······フィリス様、やはり、ノア様がフィリス様をお傍から離すとは思えませんが······」


 ライラがフィリスの額から流れ落ちる汗を拭き、手を強く握りしめた。


「ラ"イラ"ぁ······!!確かに当初の契約とは変わってしまったけれど、私には新しい契約(約束)があるものぉぉ!っふう"ぅ······あ"ぁあっ、痛い、ホントコレ、どうにかなりそうだわ!!?世の中のオカアサマ達は凄いわね······」


「フィリス様、息をゆっくり吐きましょう。

まあ······その”新しい契約”というのも果たされるんでしょうかね······?」


 吸って~、吐いて~、と出産の手伝いを全力でしながらも、“契約なんて果たされないのでは?”と軽く言ってのけるライラを、フィリスはジト目で見つめた。


「ライラ?······私の味方なのか、違うのか、どっちなのっ?!とりあえず、初期契約だった跡継ぎは産んで、確実に達成にさせるんだから!新しい契約はそれから考えるぅう"!」


「奥様、あともう少しですよ!!もう産まれますので、イマッ!いきんで下さいいい!」


 ボルマンの掛声に合わせてフィリスはお腹の子を押し出すように思い切り力を籠める。

 レオンが痛覚を緩和する魔法を掛けてくれているわけだから、痛みは一般のソレと比べるとまだマシなのだろう。


 けれど、何度でも言おう!痛いものは痛い!

 想像を絶するほどの痛みが襲い、フィリスは汗だくでボルマン医師を見た。


「ほんとうに······もうすぐなの······?もう、もうすぐ、跡継ぎが······っう、うりゃあぁぁあ!それなら意地でも産んでやりましてよおぉッ!」


 フィリスはライラの手を強く握りしめ、気持ちを奮い立たせる。

 これで自分に課せられた初期契約が達成されるのであれば、気兼ねなく新しい契約をノアに突き付ける事ができる。


 私も放棄せずに契約を達成して見せたのだから、ノア様も私との約束(新たな契約)も守って下さい!

 そう胸を張って言えるのだから!


 そんな時、ふと、フィリスの耳元でバルモント兄弟の話し声が聞こえた。


「兄上?義姉上(あねうえ)は、知っているのですか?」

「ん?何のことだ?」


『俺(僕)に何か手伝える事は!!?』と先程まであたふたしていた兄弟はボルマン医師に戒められフィリスの隣に行儀よく座って見守っていたのだが……。


「え?だって、どちらにせよ今回の出産では、当初、御二人が交わした契約は達成されないんですよね······もしかして······、義姉上(あねうえ)は······知らないのですか······?」


 レオンは顔を引き攣らせる。

 この兄なら、フィリスに言わないで隠しておくなんて事······想定内だから。


「······ああ。確かにフィリスにはまだ言っていなかったなんだったな?

フィリス、俺達の当初の契約の件だが。あれは······もし今もあったとしても達成されないと思う」


 『まあ、これも確定ではないから分からないが…、でももうそんな事はどうでも良いだろう?』と、ノアルファスは少し嬉しそうな、楽しそうな声でそう言ってフィリスの汗ばんだ髪を優しく撫でる。

 

 フィリスは懸命に踏ん張りながらも、ノアを見た。

 どことなく、嬉しそうな、邪悪さも混じったその顔に、何か嫌な予感がして汗が額を流れポタポタと落ちていく。


「契約が······達成され······ない、ですって?う”ううう、苦しいっ······い”ぃ”······!」


 そして、続いて聞こえた彼の言葉に、フィリスは唖然として動きを止めた。



「だって······産まれてくる子は······、”女の子”だからな?」



「っ、······え?」

「やはり······そういうお考えでしたか······」


 ”産まれてくる子は女の子”という言葉がフィリスの頭の中で何度も繰り返され。確かにこの国では”女の子”では跡継ぎにはなり得ない······とその言葉の意味を認識し。

 ライラは予想通りのノアの言動に飽きれた表情をした。


「フィリス様!!いきんで下さい!!いま止められては困ります!!少し押しますよおおお」


 ボルマン医師が思い切りお腹を押して、フィリスは赤子を一気に押し出す。


「ひッ、ぎゃああアア!う"、まれる"う"ッ!!!」

「産まれましたよ!旦那様、奥様、おめでとうございます!!」


 ふぇえ~ん、と赤子のか弱い泣き声が聞こえ、続いたのはボルマン医師の嬉々とした言葉だった。



「元気な、()()()です!!!」



 フィリスは、一旦処置の為に部屋の隅へ連れて行かれた我が子を見送り、初めての出産に脱力、疲労困憊の中、ノアルファスをジトっと睨みつけた。


「っ、はぁ······ノア、さま······あなた······本当に最低な人ですねぇ!!?」

「ん?なんの話だ?」

「性別ですよ!知っていて、私に隠していたのでしょう?!」

「まあ……、だが、どちらでも俺達の可愛い子供には変わりない」


「っ、それはそうですけれど…」


 医師達に処置を施されている産まれたばかりの我が子に二人は温かい視線を向ける。

 けれど、契約が達成できなかった······という事実にフィリスは項垂れた。


「私、旅には出たかったの······お願い······夢だったのよ······落ち着いたら行かせて下さいぃ······」


 ノアは出産を終えたフィリスの隣に座ると優しく頭を撫でた。


「ああ、それは一緒に行けばいいだろう。それより、よく頑張ってくれたな、フィリス。ありがとう」


「どういたしまして······じゃなくて!話をはぐらかさないで下さい!

何故、貴方も一緒に行く事になるのです?仕事が、忙しいって、いつも言っているではないですか!」


 ノアが仕事人間なのだから、一緒に着いてくる事は不可能だろう。

 フィリスは勝ち誇ったようにノアを見た。

 だが、またしても予期せぬ言葉が降ってきて、フィリスはあんぐりと口を開ける。


「ん?俺の仕事は······バルモント公爵家は外交を主に行う家なんだが?」

「······え?」


「まさか、それも知らなかったのか?」


「知るわけないでしょう!だって!公爵夫人になる必要はないとか、干渉するなとか言ったのは貴方ですよ!」


 その場にいた面々はそんなフィリスとノアの様子を見て、顔を見合わせ笑い合う。


「フィリス、旅行は一緒に行けば良いだろう?何も、行くなとは言っていないんだ。それに、そんなに当初の契約に拘るのなら、そこでまた達成できるように共に頑張ればいいだろう。な?」

「っ!······この、ムッツリスケベ性悪男おおッ!!」


 確かにロザリア王国建国以来、バルモント公爵家は外交を任されている名家である。


 でも、そんなの、契約結婚の為に無理矢理嫁いだ私が分かるわけがないじゃない!

 田舎からでてきてすぐに結婚するなんて思ってなかったのだから…。

 確かに…?一応、貴族の長女として学ぶ必要があったのでしょうけど!


 そんな憤りに寝具を握りしめたフィリスは、この日、目出度く第一子となる可愛い”女の子”を出産した。


 丁寧に身体を拭かれ、真っ白なタオルにくるまれた、ノアとフィリス、二人の ”長女” を抱いて。

 二人は先程の言い争いなど無かったかのように、肩を預け合い、寄り添って、微笑み合う。


「可愛いな……小さい。顔はフィリスに似ているだろうか?」

「ふふっ、まだ顔は分からないですわ…!でも髪はノア様の色……」


 レオンは鼻水を垂らし、号泣しながらその様子を見つめ。

 ライラは今後フィリスと子供の世話で忙しくなる事を想定し、新しく雇われた護衛やメイドと力を合わせ準備に奔走していた。


 こうしてバルモント公爵家は新たな家族、新たな仲間を迎え、益々賑やかになり。今までの公爵家では考えられ無かった程に柔らかく、心地の良い風が吹き始めていた。


皆様、いつも応援ありがとうございます!

推敲が間に合えば、閑話は明日朝頃。エピローグを夜に投稿し完結とします。

無理であれば、明日夜に閑話。月曜朝にエピローグで完結、デス!嬉

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