表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

World Adventurers Guild

作者: 卵星店長代理

新シリーズか一発屋か それが問題です


体調と体力しだいでして 




 E じゃぁ、そんな感じでよろしくー


 Z 了解ー


 Q はいー   




 とあるMMORPGのサービス終了当日のできごと


 長年遊んできたメンバーともう遊べなくなるのが寂しく思うのもあったが、もったいないなぁとも感じた人物がある提案をしてきた。 


 E まだまだ冒険したいんだよねぇ


 Q 他のゲームしますか?


 E それもいいんだけどね、もっとこう・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 Z ほう、それは冒険心をくすぐられますね


 Q 最近ではリアルで冒険できるアプリも増えてきましたが、あくまでゲームですし


 E これは冒険であってもゲームじゃない、実生活に冒険を組み込むってかんじかな


 Z ギルドの依頼を受けてランクを上げるってまさに冒険者


 Q その冒険者ギルドを現実に立ち上げると


 E どう?乗っちゃう?


 Z 仕組みはどうなるんです?方向性とかも


 E まずは依頼の内容決めるとこからかな。討伐・採取に代わるものいるし


 Q セオリー的にはなりたての冒険者が受けられるってものからですね


 E たとえば?


 Z 薬草取りは採取だから、街の中でとなるとお店の手伝いとか定番ですかね?


 E そうそう、だから今風だと初依頼は「家族・友達に『ありがとう』をもらうこと」ってどうかな? 






 

20XX年


 背広を着てネクタイをしめて出かける。聞いていたのとやってみるのでは随分ちがうものだ。


 (街の雑踏に慣れるのに1週間もかかったと後で笑い話にしないとな・・・)


 黒髪と黒目はこの国では一般的なものだが、彼はとても人目を引いていた。周囲より頭一つ高い体格に彫りの深い顔立ち。意見も見解も二つになるだろう。


 いやいや、この国にこんな遺伝子ねーよ。


 もう一つは脳内に特殊なフィルターをお持ちな方達。好きな髪と目の色に変換して、ついでに邪魔な布切れなども消してしまい心ゆくまで堪能している。


 彼が見上げた先にはビルの群れがあるのだが、だだ洩れる覇気はドラゴンを打ち落とすものだと信じている。視線こそ外したが彼の意識は人々に向けられている。どんな小さな異変も見逃すまいと。


 そこにか細く小さな声を拾う。幼子の泣き声だ。だれだ、子供を泣かすなど万死に値する。声の場所を辿るべく顔を向けると見えたものは思ったものとは違っていた。泣いている女の子はいた。なだめる母親。そして少し離れてそっぽ向いている男の子。女の子の手には片腕があらぬ方向に向いているぬいぐるみ。かなりの重症のようだ。


「お家に帰ったら治してあげるからね」


 母親はそう言っているが女の子は泣き止まない。男の子は肩を振るわせ呟く。わざとじゃない、わざとじゃ・・・


 なるほど、と彼は周囲に撒き散らしかけた殺気を消して穏やかな笑みを浮かべる。そのまま行けばさらに泣かれる自覚はあるのだ。あ、誰か倒れた。


「失礼、困りごとでしたらこちらに依頼しませんか?」


 3人の視線に合わせるためにしゃがんで声をかける。そして手の中にある液晶画面を見せた。すると母親と男の子はすぐに気づき笑顔になった。母親は『WAG』のロゴに。男の子は画面上にある彼のアバターに。真っ白のフルプレートアーマーを身に着けた姿こそがその称号に相応しいと知っているから。


「勇者のおにいちゃんだ!」


「俺はAランクで勇者じゃないぞ」


 否定してみたがそもそも聞いちゃいない。まぁ、いい。かわいさはまったくないが客寄せパンダだ。画面に必要事項を入力して送信。


 《裁縫スキル持ち 1名。依頼内容 ぬいぐるみの治療》


 カフェのテラス席で待つこと5分、現れたのはデザイン学校の被服科の学生だ。どこから走ってきたのだろうか、息も絶え絶え髪も乱れいる。160cm前後の小柄さで大きなカバンを肩から掛けていた。学校帰りだったか。


「お・・またせ・・しました。依頼を・・受けました「花」です・・・」


「急がせて悪かった。まずは、これを飲んで休憩してくれ」


「ありがとうございます。ふぅ~。もーびっくりしましたよー。有名な「イスト」さんが依頼だしているなんて。友達に自慢しちゃいますからね」


 ずーっとしゃべっているが手は一度も止まらない。母親にちょっとしたコツを教えたりしながら10分もしないうちにぬいぐるみはきれいに治った。


「はい、できました。確認よろしくお願いします」


 「花」からぬいぐるみを受け取り仕上がりを見る。上から下からじっと見定める間、こちらも見られている。そんなに珍しい顔だろうか。違いがわからない。


「ああ、問題ない。助かった」


「また呼んで下さいね。背広のボタン付けとかできますよ」


 普段もそういう依頼があるらしい。頷いてから、ぬいぐるみの治療前と治療後の画像と「花」の評価を送信する。3人にも笑顔であいさつして来た道を戻っていった。 


 さて、あと残ったのは・・・


 男の子の前に立ちもう一度しゃがんで目を合わす。ぬいぐるみは治った。だがそれだけでは十分ではない。彼のしたことがなかったことにはならないからだ。その証拠に女の子は母親のうしろで彼をにらんでいる。


「ほら、後は任せたぞ」






 私の知っている風景はみなさんといつか見られるでしょうか

  


 


 


 


 


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ