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自作小説倶楽部 第20冊/2020年上半期(第115-120集)  作者: 自作小説倶楽部
第116集(2020年2月)/「梅」&「世代」
8/26

03 紅之蘭 著  世代 『ガリア戦記 08』

【あらすじ】


出世に出遅れたローマ共和国キャリア官僚カエサルは、人妻にモテるということ以外さして取り柄がなかった。おまけに派手好きで家は破産寸前。だがそんな彼も四十を超えたところで転機を迎え、イベリア半島西部にある属州総督に抜擢された。財を得て帰国したカエサルは、実力者のポンペイオスやクラッススと組んで三頭政治を開始し、元老院派に対抗した。



挿絵(By みてみん)

挿図/Ⓒ 奄美剣星 「ユリア・カエサリス」




    第8話 世代


 今月のお題は世代だ。

 世代といってガイウス・ユリウス・カエサルに関わることといえば、この人の娘のユリア・カエサリスの年の差結婚を著者は彷彿させられる。ユリア・カエサリスという名前は、ユリウス氏族・カエサル家の娘という意味だ。紀元前八十三年生まれである彼女の幼少期、父親のカエサルは、時の権力者に逆らって亡命したり、勉学のために外遊したりしたので、祖母と母親によって極めて魅力的な令嬢に育てられた。そのため疎遠だった父親カエサルが帰国したとき、当然のように溺愛されたのだった。

 ユリアは最初、とある名家の男性と婚約していたのだが、父親カエサルが三頭政治を行うのにあたって、二十歳年上のポンペイウスと結婚した。ポンペイウスは美貌の妻にくびったけで、イスパニアにあるいくつかの属州総督であったにも関わらず、現地には赴かずに部下を送って統治させ、自らは新妻とローマで暮らした。

 ユリアは二回妊娠したのだが、一回目は流産し、二回目は彼女が産褥熱で死亡した直後にその子は亡くなった。カエサルがブリタニア島に遠征していた紀元前五十四年のことだ。

 ポンペイウスは自分の家領で彼女の葬儀をしようとしたのだが、ユリアは夫以上にローマ市民、ことに女性たちに愛された。ローマ市民はローマの聖地であるカンプス・マルティウスで彼女を荼毘にふした。

 ユリアは、父カエサルと夫ポンペイウスとをつなぐカスガイのようなものであったのだが、その死によって二人は決裂し、五年後である四十九年から翌四十八年のローマ内戦で、名称ポンペイウスは最初で最後の敗北を喫した。

 唯一の嫡子であったユリアを失ったカエサルは、その後ことあるごとに、あの子が生きていてくれればと嘆息したものだった。彼女が生きていれば、その子孫がローマ帝国初代皇帝になっていた可能性がある。

     

 ローマ軍の宿営地だ。

 髪の毛を青く染めて娼婦のような恰好をしたガリア人の娘・イミリケは禿げた男が好きだった。そしてたまたま、帷幕から出てきた背の高い禿げた男に熱い視線を送った。

「そこのご婦人よ、そなたは人妻か、独身か?」

「ほう、私を娼婦だなとは聞かないのですね。ずばり人妻です」

「隣にいる坊やの?」

「ああ、この子・ウェルは一族の者で、私の舎弟です」

 カエサルは若い娘が好みではなかった。娼婦と遊んだという評判も聞かない。けれども家運が傾くほどの高価な贈り物を人妻にやって、派手に遊んでいた。

 その先の野暮は言うまい。

          つづく

【登場人物】


カエサル……後にローマの独裁官となる男。民衆に支持される。

クラッスス……カエサルの盟友。資産家。騎士階級に支持される。

ポンペイウス……カエサルの盟友。軍人に支持される。

ユリア……カエサルの愛娘。ポンペイウスに嫁ぐ。

オクタビアヌス……カエサルの姪アティアの長子で姉にはオクタビアがいる。

ブルータス……カエサルの腹心 

イミリケ姐御と舎弟ウェル……謎のガリア人

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