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自作小説倶楽部 第20冊/2020年上半期(第115-120集)  作者: 自作小説倶楽部
第115集(2020年1月)/「抱負(野望)」&「衣装(着物)」
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04 らてぃあ 著  野望 『ある一族の野望』

挿絵(By みてみん)

挿図/Ⓒ 奄美剣星 「青の令嬢」




 娘のほうは、まあ、少しはいいなと思ったんだ。一族の悲願のためとはいえ、こちらは財産目当てだから醜女と結婚することも覚悟していたんだ。それが、笑うとなかなか美人で、話して見れば嫌味もなく頭もいいし、贅沢もしない。いつか彼女と僕の一族の故郷に旅行しようと約束したんだ。それがだ。突然、母が反対するので付き合えない。少し距離を置きましょうと言われたんだ。納得できるものか。

 母親? 彼女とは似ても似つかぬ大女だった。派手な宝石をジャラジャラさせて。母親が大蝦蟇なら、彼女は小鹿だよ。

 母親と会ったのは二週間前だよ。バイトをしていた紳士服屋の隣の花屋にリムジンで訪れた。離れたところから見ていたんだけど、ひさしの広い帽子が外れて転がったから拾ってあいさつしに行ったんだ。幸い仕事用のちゃんとしたスーツを着ていたからね。アンナの友達です。って言ったら、盗人でも見るかのような目で見られたよ。大学での知り合いだと説明すると急に「娘は誰とも付き合わない」と言って去って行った。

 そして今、彼女は俺を避けて、どういうわけかヴァンスやブライトと一緒に行動しているらしい。ひどい屈辱だ。俺は落ちぶれたとはいえ、武功で家を興した伯爵家の末裔だ。ダダでは置かない。

 え? 御年80歳のヴァンス教授と大学事務局のブライト女史じゃあ、心がわりにもならないっ て? 二人の共通点? 苦学生の支援と奨学金だって?


          *


 やあ、悪いけどジャケットを貸してくれないか。これからアナとデートなんだ。貸衣装屋じゃないって? わかってるよ。君とは金銭じゃなくて友情の関係だ。クリーニングには出すけどタダで貸してもらうよ。

 大蝦蟇夫人はアナを実の娘の身がわりにしていたことがバレて本国に帰ったらしいよ。本物のアンナはとっくの昔に母親に反発して男と駆け落ちしていたらしい。大した学力もない娘を名門大学に進学させるなんて見栄を張るからいけない。しかし、身がわりになることで彼女は大学との伝手を得て、俺は彼女と知りあった。有り難い迷惑だね。

 今日は彼女にプロポーズしようと思うんだ。俺も彼女も貧乏には慣れているし、彼女は自力で奨学金と再入試の許可を取ったくらいたくましいから、頼もしい妻になるよ。お金を貯めて新婚旅行は一族の祖国にするんだ。

 祖父の代に人手に渡った城はどうするのかって? そう言えはそれが最初の動機だった。まあいいよ。いずれ生まれて来る俺と彼女の息子にゆだねるとしよう。

          了

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