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自作小説倶楽部 第20冊/2020年上半期(第115-120集)  作者: 自作小説倶楽部
第120集(2020年6月)/「生物(紫陽花 蛍 蝸牛)&抽象(魔法・Xデー《=滅亡前夜・仏滅13日金曜日》・大人の事情《心変わり》)
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02 柳橋美湖 著  大人の事情 『北ノ町の物語 73』

【あらすじ】


 東京のOL鈴木クロエは、母を亡くして天涯孤独になろうとしていたのだが、実は祖父一郎がいた。手紙を書くと、祖父の顧問弁護士・瀬名が夜行列車で迎えにきた。そうして北ノ町に住むファミリーとの交流が始まった。お爺様の住む北ノ町は不思議な世界で、さまざまなイベントがある。

 ……最初、お爺様は怖く思えたのだけれども、実は孫娘デレ。そして大人の魅力をもつ弁護士の瀬名、イケメンでピアノの上手なIT会社経営者の従兄・浩の二人から好意を寄せられる。さらには、魔界の貴紳・白鳥まで花婿に立候補してきた。

 季節は巡り、クロエは、お爺様の取引先である画廊のマダムに気に入られ、そこの秘書になった。その後、クロエは、マダムと、北ノ町へ行く夜行列車の中で、少女が死神に連れ去れて行くのを目撃。神隠しの少女と知る。そして、異世界行きの列車に乗って、少女救出作戦を始めた。

 異世界では、列車、鉄道連絡船、また列車と乗り継ぎ、ついに竜骨の町へとたどり着く。一行は、少女の正体が母・ミドリで、死神の正体が祖父一郎であることを知る。その世界は、ダイヤモンド形をした巨大な浮遊体トロイに制御されていた。そのトロイを制御するものこそ女神である。第一の女神は祖母である紅子、第二の女神は母ミドリ、そして第三の女神となるべくクロエが〝試練〟に受けて立つ。


挿絵(By みてみん)

挿図/©奄美剣星 「クルージング(旧題:クロエと白鳥さん)」

     73 切り札、第七階層にて


 クロエです。大変なことになりました。

 浮遊ダンジョン最大のフロア・第七階層の海をクルージングボートで航海中の私たちは、まだ北洋海賊船と交戦中したのですが、敵の頭目は父で、私たちは捕えられ、海賊島に連れて行かれたのです。そこではさらに大変なことが……。


          ◇



「し、白鳥さん、どうなさったのです?」

「クロエ、悪いんだけど、君の父上の側に寝返らせてもらうよ。……ピーちゃん付きでね」

 プールサイドの椅子に座った白鳥さんの右肩には眷属の使い魔ちゃん、そしてさらに、反対側には、小型化させた炎龍のピーちゃんがいます。

 浮遊ダンジョン各フロアで、プレイヤーである私たちの審判をしていらっしゃる三人娘さんにうかがうと、それぞれ分厚いルールブックを携えた彼女たちが少し離れたところに移動して議論を始め、五分ほどしてからようやく、私に結論を持ってきました。

「有効です! 今のクロエ様はチート過ぎるのです。まず、ご自身が女神として覚醒しだしており、今や『巨大災害』級怪獣に匹敵し、全方位ビームまで放てます。その上、小型化したとはいえ、山塊を一撃で吹き飛ばす炎龍のピーちゃん、魔界でも一二を争う術者・白鳥さんまでいたら、このゲームはもはや試練と呼ぶにはちゃちなモノになってしまいました。……そういうわけで、白鳥さんとピーちゃんは、クロエさんのお父様側につきました」

 白いジャケットを着た父がはにかんでいます。

 元の世界では私が勤めている画廊を経営しているマダムが、私に小声で言いました。

「きっと、あなたのお父様は白鳥くんに、うまく邪魔をしたらクロエの婿として認めてやる……みたいなことを言って籠絡したんだわ」

 なるほど、白鳥さんなら父の籠絡に乗ってもおかしくない。だけどピーちゃんにとって、私から父へ寝返るメリットが見当たりません。

 動機はどうであれ、とにかく白鳥さんとピーちゃんは父の側に寝返りました。残るパーティー・メンバーで、第七階層から第八階層に駆け込まなくてはなりません。

 ――第七階層を抜けるには、敵海賊船を奪って島を脱出するか、テレポーテーションのドアみたいな秘密の抜け道をみつけて第八階層へ抜けなくては……。

 私は、風・水・土・炎の妖精を放って脱出路を探させました。

 ところが。

「クロエのやりそうなことなんてすぐに分かるさ」

 白鳥さんが四大精霊の先に、炎竜のピーちゃん、眷属の使い魔ちゃん、そしてご自身が先回りして飛んで行き、それらをフリーズさせ海へ落としてしまいました。

「クロエ、そろそろ手詰まりのようだね」

 白鳥さんが不敵に笑いだします。

 ――やっぱり、この人の本性は吸血鬼だわ!

 白鳥さんの横には、父がいて、私の顔をチラっとみしました。

「いかん、クロエが何か企んでいる」

 さすがは血を分けた父親。でももう遅いです。

 従兄の浩さんが放った眷属の電脳執事さん、お爺様の顧問弁護士・瀬名さんの眷属・護法童子くんが、テレポーテーション・ゲートを見つけたのです。

 浩さん、瀬名さん、マダム、そして私……。

 こうして私たちは、E島にある第七階層のゴールにたどり着き、審判三人娘さんたちが振る旗の横を脱兎のごとく駆け抜けて、第八階層に続く階段を昇って行ったのです。


          ◇


 それでは皆様、また。

          by Kuroe

【主要登場人物】


●鈴木クロエ/東京暮らしのOL。ゼネコン会社事務員から画廊マダムの秘書に転職。母は故ミドリ、父は公安庁所属の寺崎明。女神として覚醒後は四大精霊精霊を使神とし、大陸に棲む炎竜ピイちゃんをペット化することに成功した。なお、母ミドリは異世界で若返り、神隠しの少女として転生し、死神お爺様と一緒に、クロエたちを異世界にいざなった。

●鈴木三郎/御爺様。富豪にして彫刻家。北ノ町の洋館で暮らしている。妻は故・紅子。異世界の勇者にして死神でもある。

●鈴木浩/クロエに好意を寄せるクロエの従兄。洋館近くに住み小さなIT企業を経営する。式神のような電脳執事メフィストを従えている。ピアノはプロ級。

●瀬名武史/クロエに好意を寄せる鈴木家顧問弁護士。守護天使・護法童子くんを従えている。

●烏八重/カラス画廊のマダム。お爺様の旧友で魔法少女OB。魔法を使う瞬間、老女から少女に若返る。

●白鳥玲央/美男の吸血鬼。クロエに求婚している。一つ目コウモリの使い魔ちゃんを従えている。第五階層で出会ったモンスター・ケルベロスを手名付け、ご婦人方を乗せるための「馬」にした。

●審判三人娘/金の鯉、銀の鯉、未必の鯉の三姉妹で、浮遊ダンジョンの各階層の審判員たち。


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