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自作小説倶楽部 第20冊/2020年上半期(第115-120集)  作者: 自作小説倶楽部
第115集(2020年1月)/「抱負(野望)」&「衣装(着物)」
2/26

01 柳橋美湖 著  衣装 『北ノ町の物語 68』

【あらすじ】

 東京のOL鈴木クロエは、母を亡くして天涯孤独になろうとしていたのだが、実は祖父一郎がいた。手紙を書くと、祖父の顧問弁護士・瀬名が夜行列車で迎えにきた。そうして北ノ町に住むファミリーとの交流が始まった。お爺様の住む北ノ町は不思議な世界で、さまざまなイベントがある。

 ……最初、お爺様は怖く思えたのだけれども、実は孫娘デレ。そして大人の魅力をもつ弁護士の瀬名、イケメンでピアノの上手なIT会社経営者の従兄・浩の二人から好意を寄せられる。さらには、魔界の貴紳・白鳥まで花婿に立候補してきた。

 季節は巡り、クロエは、お爺様の取引先である画廊のマダムに気に入られ、そこの秘書になった。その後、クロエは、マダムと、北ノ町へ行く夜行列車の中で、少女が死神に連れ去れて行くのを目撃。神隠しの少女と知る。そして、異世界行きの列車に乗って、少女救出作戦を始めた。

 異世界では、列車、鉄道連絡船、また列車と乗り継ぎ、ついに竜骨の町へとたどり着く。一行は、少女の正体が母・ミドリで、死神の正体が祖父一郎であることを知る。その世界は、ダイヤモンド形をした巨大な浮遊体トロイに制御されていた。そのトロイを制御するものこそ女神である。第一の女神は祖母である紅子、第二の女神は母ミドリ、そして第三の女神となるべくクロエが〝試練〟に受けて立つ。

挿絵(By みてみん)

挿図/Ⓒ 奄美剣星 著 「クロエさんとピーちゃん」




     68 第六階層のティファニー


 皆様こんにちは、クロエです。前回のお便りでは第五階層クリアゲートをくぐるとき、ゲートがツリーになっていて、枝からモンスター吊り下がっていたというおぞましい状況を打破するため、マダムと私がシン・ゴジラみたいに全方位ビームを使い、全モンスターを駆逐し、見事、第五階層をクリアできました。

          ◇

「ねえ、クロエ、生きてる?」

「はい、マダム、なんとか……」

 多頭犬ケルベロスさんの馬よりも大きな背中に乗せられたマダムと私はお互いに折り重なるようにもたれかかっていました。

 浩さんがマダムの顔を見て、「それにしても壮絶な……」と瀬名さんに言ったところで、マダムと視線が合い押し黙りました。

 マダムは戦闘中、セーラー服が似合う美しい魔法少女に変身するのですが、戦闘が終わると年相応の姿に戻ってしまいます。しかし、全方位ビームの体力消耗は凄まじく、RPGゲームで言ったならMP0状態になっていました。だから「生けるミーラ……」いえ、ここから先は口をつぐみます――な状態になっていました。

 そんなマダムに白鳥さんは、「仕事を成し遂げた女は美しいですよ、マダム」と労いの言葉をかけていました(……何だか白鳥さんの好感度がまた上がったような)。

          ◇

「皆さーん、お待ちかね、ダンジョン・ショッピングモールで自由時間。もちろんモール・エリアでのモンスターは完全排除。安全なショッピングをお楽しみ下さい」

 審判三人娘の皆さんが私たちに言いました。

 ショッピング・モールには高級ブティックが立ち並んでいるばかりではなく、劇場やカジノもあります。マダムには予備バッテリーがあるのでしょうか、私の腕をつかんでケルベロスさんの背を飛び降り、「ティファニー」と書かれた看板のお店に入りました。

 私たちがショッピングを楽しんでいる間、殿方は通り向かいのカジノに行くと言っていました。そんな殿方の背中を見送ってから、私は横にいる審判三人娘の皆さんに聞いていました。

「第一階層からこの第六階層に来るまで、階層がだんだん広くなっているような気がするのですけど……」

「はい、全十三階層ある浮遊ダンジョン『トロイ』の中で、フロア面積が最大なのは第七階層で、第五階層と第八階層がそれに次ぎます」

 私が審判三人娘の皆さんと話しをしている間、マダムが店員さんと価格交渉していました。

「女神・魔法少女対応エコ・ショール? 何これ?」

「ゲームで言うなら、魔法術式一回ごとに使われるMP消費量を三分の一に抑える画期的な商品! 試着なさってみます?」

「もちろん」

「では超時空爆撃場へお越しください。あそこでなら大陸撃沈術式、小惑星粉砕術式でも撃ち放題!」

(おお!)

 店員さんからサービス品のマジック・ポーションを手渡されたマダムと私は、それを飲んでMP値を五十ほど回復し、お店の亜空間エレベーターを使い時空の狭間にある超時空爆撃場まで移動し、数キロ先に設置された的に、掃討ビームを照射してみました。

 プシュッ……

 店員さんがニコニコして、

「お見事ですお客様、的は量子レベルにまで分解されました! では測定器で計測してみましょう」

(なるほど、私たちがショールをつけていないときMP二十を消費していたのが、十に減っている……)

 というわけでマダムと私は、エコ・ショールを購入しました。お支払いは百万クレジット。今までかなりのモンスターを倒しているのですが、ロクに引き落としをしていなかったので、余裕で二着買えちゃいました。

 色はマダムとおそろいで、ちょっと温かみのあるグレイを地にしたチェック柄。もちろん気に入りましたよ。

          ◇

「カジノのバニーって言えば普通、ウサ耳、ハイレグ、網タイツだろ。何だ、ここは。本物の兎にその恰好をさせている。おかげでプレイに集中できず無駄にエナジー・ロス……してしまった」

「クレジットのお小遣い上限クレジットもMAX使ってしまいました」

「つい熱くなってしまった。これも若気ゆえの過ちというものか……」

 そんなことを言いながら通り向かいのカジノから殿方が戻ってきた殿方を、お店の前で待っていたマダムと私を迎えて、ダンジョン探検の再開です。

 ところがバリアで守られたモール・エリアから私たちが出た途端、モンスターたちが襲いかかってきました。

 ゾンビ系、亜人・獣人系、異界鳥獣系と様々……。

 もちろん瀬名さん、浩さん、白鳥さんが護法童子くん、電脳執事さん、使い魔ちゃんを召喚し、私も四大精霊、マダムも魔法射撃〝マジック・ショット〟で対抗したのですが何分にも数が多いし、何よりも先の戦闘でのMP回復が不十分でした。いくらエコ・ショールを使ってもすぐにMP切れになっちゃいました。

 石畳の街路の真ん中にいる私たちを挟み込むようにモンスターの群れが数百……。

(ああ、もう駄目……)

 ところが……というか、ある程度予想はしていたのですが……。

 轟音とともに直径数メートルもある閃光の柱が、ダンジョン外部から放射されたのでした。


 ピーちゃん、お久しぶり。


 私が放し飼いをしている炎竜のピーちゃん。ダンジョンから帰るまでいい子にしていてねってお願いしておいたのですが……。

 ピーちゃんの片目が大きな風穴の向こうからこっちを見ていました。

 審判三人娘の皆さんはご立腹。

「こ、殺されるかと思った。……幸い浮遊ダンジョン基幹部直撃は避けられましたが、施設は甚大な被害。これは明確な反則行為です。というか、ペットの粗相は、全て飼い主さんの責任ですからね。女神クロエ様ご一行の皆さんは、第一階層からまたやり直して下さい、プンプン」

 す、すみません、すべては飼い主である私の監督不行き届き。よく言って聞かせます。ペコリ。

          ◇

 それでは皆様、また。

          by Kuroe

【主要登場人物】

●鈴木クロエ/東京暮らしのOL。ゼネコン会社事務員から画廊マダムの秘書に転職。母は故ミドリ、父は公安庁所属の寺崎明。女神として覚醒後は四大精霊精霊を使神とし、大陸に棲む炎竜ピイちゃんをペット化することに成功した。なお、母ミドリは異世界で若返り、神隠しの少女として転生し、死神お爺様と一緒に、クロエたちを異世界にいざなった。

●鈴木三郎/御爺様。富豪にして彫刻家。北ノ町の洋館で暮らしている。妻は故・紅子。異世界の勇者にして死神でもある。

●鈴木浩/クロエに好意を寄せるクロエの従兄。洋館近くに住み小さなIT企業を経営する。式神のような電脳執事メフィストを従えている。ピアノはプロ級。

●瀬名武史/クロエに好意を寄せる鈴木家顧問弁護士。守護天使・護法童子くんを従えている。

●烏八重/カラス画廊のマダム。お爺様の旧友で魔法少女OB。魔法を使う瞬間、老女から少女に若返る。

●白鳥玲央/美男の吸血鬼。クロエに求婚している。一つ目コウモリの使い魔ちゃんを従えている。

●審判三人娘/金の鯉、銀の鯉、未必の鯉の三姉妹で、浮遊ダンジョンの各階層の審判員たち。

●ケルベロス/浮遊ダンジョンで白鳥が手名付けたモンスター。馬代わり。

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