1/6
芽生える意志
「恐竜ってな、すごいねん。」
「そうなん?」
「うん。恐竜のな、列車。恐竜電車。」
「すごいなぁ〜。」
いつからだろう、この世界で、僕はただ生きていた。
慣れ親しんだ故郷から一歩出れば、僕はたちどころに右も左も分からない稚児のような世界の迷い子になってしまうだろう。
それでも僕は行かなきゃならない。
この胸の高鳴りのままに。
地を蹴って駆け出す。
少し気を抜けば、この透き通った青空でさえ曇らせてしまうような、そんな不安を置き去りにするように。
前へ前へ、全力で腕を振る。
まるで溺れかけの子猫のように、深い深い海からもがき上がろうとするように、何かを掴もうと。
立ち塞がるのはこの世界。
これは、目に見える空、星、海、その全てに対する宣戦布告である。
ーーー冒険が、幕を開ける。