表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/53

錦松雪姫の 脱! やまとなでしこ宣言! - 4

 「罪を犯したら罰を受けなくてはならない」、変な所で義理堅い我らが主人公、高橋椋丞くん。

 自ら志願して祖父の寺へ出向いたものの……待っていたのは修験道の荒行ではなく、


 「もっとガチャを引け!」という、敏腕OL宮居志帆の【誘惑】だった……


 果たして我らが椋丞くん、進められるがまま、ガチャの堕落に身をやつしてしまうのか?

 ジャンキーとして社会不適合の人生を送る羽目になるのか?


 そんな椋丞の前に現れたのは、思いもかけない「本物」のレアカードだった。

 宮居の手配した「本物」は彼に何を与えるのか?


 スーパーガチャジャンキー声優ストーリー(????)、

 彼(椋丞)の末路? を見届けろ!


「お疲れ様でした~」

 バスン。

 満面の笑みを浮かべた阿国ちゃん、風のように去っていった……

「こ……これが『触媒』の力か?」

 携帯を持つ手が震える。その【結果】に悪寒が駆け抜ける。

 だって!

 だってだって!

 たった一回の召喚で「自分」を引き当てたんだよ? 彼女(阿国ちゃん)!

 『本物』がやると、ここまで強力な引きを産むの????

 噂以上だ!

 なんという触媒力! すごいぞ本人!


「いや、というか!」

 そもそもおかしいじゃないか!

 今更ながら僕は気づいた。この状況に於ける、重要な前提の齟齬そごに。


【 何 故、 今、 阿 国 ち ゃ ん が 引 け る ん だ ? 】


 彼女は期間限定PUのキャラで、恒常召喚では出るはずがない。

 おかしいじゃないか? どう考えても、おかしい!

 『ラブ・プロトコル・リーンヴェンション』は、限定キャラの出し惜しみにかけては、ソシャゲ界でも一、二を争う悪名高いゲームだ。


 首を傾げながら、もう一度、召喚画面を確認してみると……

「あーっ!」

 二度見どころの騒ぎじゃない!

 なんじゃりゃああああああああああああああああああ!


『ラブ・プロトコル・リーンヴェンション 突発☆お客様大感謝祭! 全キャラ総放出祭り!』


 と称して、全ての限定キャラがPUにラインナップされている!

「はああああ????」

 ラブ・プロトコル・リーンヴェンション……というより、ソシャゲ界の常識ではありえない!

 これはつまり、自分で自分の首を締める自殺行為に等しい。

 サービスとしては破格の大盤振る舞いだとしても、

 レアアイテムの希少性を安易に損なったら、重課金戦士たちにソッポ向かれて、売上が大幅にダウンしかねない【両刃の剣】!

 運営休止前の一稼ぎ、じゃあるまいし……

 『ラブ・プロトコル・リーンヴェンション』は、セールスランク上位常連の売れ線ゲームだぞ?

 いつ、店じまいしてもおかしくないような泡沫ほうまつ作品とはワケが違う。


 そんな捨て身の大出血サービスも目を疑うが、

「まさか……」

 こっちの異常さも有り得ない。

 僕のアプリのカードリストに燦然さんぜんと輝く「NEW!!!!」の表示。

 出雲という「土地触媒」での召喚に失敗した阿国ちゃんが、ちゃっかり僕の携帯で微笑んでる。

 嘘みたいだ……

 ラブ・プロトコル・リーンヴェンションのガチャ仕様として、

 ☆5を引き当てる確率は僅か1%、すり抜けを含めたら、0.7%、限定キャラは総数五十体以上が存在するワケだから……計算するのも嫌になるほどの極小確率。

 そんな中から『自分』を引き当てるとか!

「途方もないぞ、声優の触媒力!」


「いちいち驚いてたら身が持たないわよ?」

 ゲートキーパー宮居さん、早速、次なる『本物』を投入してくる。

「ボンジョルノ、シニョーリ、ボーダーブレイク!」

「ミケランジェロちゃん!?!?」


 驚いている暇もなかった。

 人類の美術史に燦然と輝くスーパーアーティスト(※女体化)は、チョチョイのチョイと、たった数度の召喚で『自分』引き当て、

「それじゃ、また指名してね♪ アリーヴェデルチ!」

 と去っていった……


 その後も、入れ代わり立ち代わり『本物』が現れては、

 無機質な部屋に華やかなコスプレの花が咲き、乱数を嘲笑うように『自分』を引き当てていく。

 つまり、

 つまりここは――『☆5を当てないと出られない部屋』!?



 そして……

 いつ果てるとも知れぬ「コスプレ声優、わんこそば状態」も……遂に終焉を迎える。

 延々と乱入者が雪崩れ込むバトルロイヤルも、スリーカウントでフィニッシュだ。

 そう…………揃ってしまったからである。

 五十体を超える限定☆5が全て――宮居さんの用意した最強触媒群のお蔭で。

 前代未聞の「NEW!!!!」が五十体。

 あまりの事態に驚き果て――僕はベットで干乾びた。




「椋丞くん、大丈夫?」

 覚束おぼつかない足取りで【檻】を退出した僕には、彼女の労い(ねぎら)すら馬耳東風だったが……

「今までお疲れ様……」

 その言葉に託された意味。

 結果として彼女(宮居さん)の目論見は成功したのだ。

 『ラブ・プロトコル・リーンヴェンション』というゲームは終わった――

 サービス開始以来、バイト代を注ぎ込み、レアキャラを求め続けたソシャゲは終焉を迎えた。

 製作委員会とは何ら関係ない別会社の制作・運営のゲームにも関わらず、

 辣腕らつわんOL宮居志帆の裏工作【ピックアップスケジュールの大改変】と、声優という天下無双の触媒で、強制的にエンディングを迎えることになったのだ。


  僕 の 中 で は ! 


   僕  の  中  で  は  !  


「僕の………僕の『ラブ・プロトコル・リーンヴェンション』は、これでゲームオーバーだ!」

「そうじゃ、椋丞! おぬしは生まれ変わったのじゃ!」

 ソシャゲのくびきから解き放たれ、真人間に戻った僕を――爺ちゃんが祝福してくれる。

「は……ははは…………」

 なのに何故、

 どうして涙が流れてくるんだろう?

 喜ぶべきことなのに…………どうして涙が……ハハハ……


「泣くな、椋丞!」

「爺ちゃん……」

「悲嘆に暮れる前に、やるべきことがあるじゃろが?」

「!!」

「古より高橋家(魔術師の家系)は巫女を推戴すいたいする役目を担ってきた。それこそ、我が一族に生を受けし者の宿命ぞ!」

 幼少から、ずっと爺ちゃんにさとされてきた「魔術師の心構え」。

 これが音叉の魔術師としての生きる道。

「椋丞、自分で蒔いた種は自分で落とし前を着けてくるのじゃ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ