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第四章 錦松雪姫の 脱! やまとなでしこ宣言!

というワケで第四章、開始です!


前回の引きから、現在まで何が遭ったのか?


挿絵(By みてみん)

 ※ ※ ※ ※ 祝☆GHPガン・ハイドレード・パレード再始動! ※ ※ ※ ※


 ヒロインにしてゲーム宣伝のフロントマンたる種村未沙の緊急入院、というアクシデントに見舞われたソシャゲも、

 敏腕(?)音響監督・高橋椋丞ぼくがスカウトしてきた錦松雪姫に代役を任せることで、一件落着。

 「ひとりぼっちのヒロインオーディション」に立ち会った製作委員会の面々も満場一致で彼女(錦松さん)を後任と認めた。

 よかったよかった。売れ線ソシャゲの前途も、これで安泰♪

 調整室から心配げに見守った関係者一同も、皆、ホッと胸を撫で下ろす。


 音叉の魔術師 謹製『種村未沙型琴線音叉 ミサミサ・サーチライト』が見出した【種村未沙の周波数を持つ、稀有な声優】――その最適解が錦松さんとは、(音叉作成者の)僕自身にも予想外だったけれど……


 でも――音叉の神託は絶対。

 余分な人の思惑など切り捨てて、音叉は僕らに正しい道を示してくれる。

 音叉こそ世界に秩序をもたらす神器…………のはず、


 はず、だったのだが……


 手放しの祝賀ムードも一日にして覆された。


 その原因は――


『おはよう、眷属の諸君!』


 問題のオーディションの後……

 元々、仕事が入っていた錦松さんは足早に次の現場へ。

 立ち会った製作委員会(関係者たち)も三々五々、収録スタジオを退出し始める中……


『今日も! 君たちの魂を、試しに来た!』


 勝手に金魚鉢(録音ブース)へと入室し、マイク前で喋り始める女性が一人。

 それは、流れで娘に随伴してきた、錦松さんのママだった。

 でも、いくら親族であっても【その場所】は!

 一般人が授業参観気分で入っていい場所じゃないのに!

 選ばれた巫女しか立てない神聖な場所なんですよ! マイク前は!

 素人さん、立ち入り厳禁!


 ……と、慌てたのは僕一人。

 だって彼女はベテランもベテラン――業界人なら知らなきゃモグリ、

 アイドル声優の先駆けとも言える大御所女優・伊勢原雛子さんだったのだ!

 知らぬは僕ばかりナリ。

 僕、赤っ恥!


 そんな人(超有名声優)だからして、戯れに録音ブースへ入ったって咎められるはずもない。

 というか、むしろ伊勢原さん、(僕は知らなかったのだが)昔からサービス精神旺盛なことでは有名な役者さんで。

 頼んでもいないのに、かつて自分が演じたキャラを演じ始めた!


「マジですか……?」


 それは僕にとって一種のカルチャーショック。

(そんな役まで演ってたんですか? 伊勢原雛子って!)

 国民的ゲームの強面こわもてから、子供向けのキッズアニメまで、

 自分も慣れ親しんできたコンテンツの記憶が強烈なフラッシュバックで――記憶爆発!


 ――――気がつけば、やってしまっていたのだ。


 つい出来心で。


 ネットから浚った映像を、録音ブースのモニターへアウトプットし、

 調整卓を操って演者さんのパフォーマンスを支援する、

 いわばプライベートセッション――――即興でディレクションする『伊勢原雛子の世界』。

 彼女の熱演に音響ディレクターとして華を添える。

 ついつい本気で。

 調整卓を縦横無尽に操って、

 音叉の魔術師の能力を解放し、演者さんの良さを際立たせる。


 するともう、調整室に残っていた関係者はノリノリ!

 真っ昼間からスーツの大人どもが、アゲアゲだ。

 アフレコスタジオが、謎の狂乱ダンスフロアへ変貌を遂げてしまっていた。


 ま、それだけなら『伊勢原雛子って、やっぱりレジェンドだわ……』で済む話だけど……


 済まなかったんだ。


 一部の製作委員会メンバーが強行に異議を主張し――決まったはずの【種村未沙の代役案件】が覆されてしまった!


 考えてみれば『伊勢原雛子ど真ん中世代』は既に結構な年齢になっているはず。

 つまり企業の中枢部へ収まり始めた世代なので。

 製作委員会に「伊勢原キッズ」が紛れ込んでいても何ら不思議もない。


 遂には製作委員会内部で【錦松派】と【伊勢原派】がガチンコ対立し始める始末。

 ヒロインが決まらなければ、ゲームの運営は停滞。プロモも捗らず、売上は下がる一方なのに。

 両者一歩も引く気配すらなく、混迷の度は深まるばかり。


 だが――そんな状態を、彼女が手をこまねいているはずがない。

 やり手OL、宮居志帆は一計を案じた。

 自分が立ち上げから手塩にかけたゲーム、GHPガン・ハイドレード・パレードの灯を消してたまるか! その使命感に突き動かされ、


「こうなったら、一ヶ月後に公開オーディションイベントを執り行いましょう!」

 と提案するに至る。


 ヒロインの後任を決めなければプロジェクトは再始動不可能――そんな先入観を蹴飛ばして、

「候補が存在するなら、それを使えばいいじゃないですか?」

 という乱暴な案だったが……


「「「「いいね!」」」」


 製作委員会としてはやぶさかではない。

 どんなイシューであれ、世間でバズれば広告となる。

 不手際だろうが炎上だろうが、話題になったもの勝ちなのだ。企業人(彼ら)の判断基準では。


 そしてここに――

 『GHPプレゼンツ 錦松雪姫 vs 伊勢原雛子 骨肉のヒロイン決定戦!』が告知された。





製作委員会こっちはコレでいい――――あとは【彼】を何とかしないと……」

 敏腕仕掛け人・宮居志帆の目は、早くも別の方向を向いていた。


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