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藤村由綺佳と吉井春宵のツインビーPARADISE! - 12

頼りになる二人のボディーガードも雇えて万全!

……かと思いきや、謎の【絶叫音源】に誘われて、怪しさ満点のビルへと招かれてしまった我らが主人公、高橋椋丞くん。


その異空間で獅子仮面の紳士が彼に告げるのです。

「世界は売れないアニメで満たされている!」

ナンノコッチャ?

怪しげなライオンマスクに翻弄される椋丞、

果たして謎仮面の目的は? 意図は? 椋丞に何を求めるのか?


第二章、いよいよ佳境です!


「覇権と持て囃される作品は、ホンの一握り。大概のアニメは軒並み爆死を免れず……つまりそれは赤字を【誰かが】背負うことを意味する」

 弱肉強食のサバンナで百獣の王が吼える!

「しかしだ! ミスター高橋ボーダーブレイクくんよ!」

 そんな錯覚を受けてしまうほど、ライオンマスクは朗々と僕へ説く。

「それでもアニメは作られ続け、廃れる兆しもないッ――――――――それは何故か!!??」

(い、いわれてみれば!)

 ファンはBD売り上げ結果を無責任の一喜一憂していればいい。

 だけど「お金を出す方」にとっては死活問題のはずだ!

 ちょっと考えれば、分かることじゃないか!

「そのリスクヘッジのための製作委員会方式では?」

 完全にライオン丸のペースに呑まれながらも、教科書通りの答えを返せば、

「そんな甘いものかね、世の中とは?」

 小僧を値踏みする目線で、僕を射抜くライオン丸。

「いいかい、ミスター高橋ボーダーブレイクくん――――社会とは!」

「……社会とは?」

「誰かが損失を被ったら誰かが補填する。それが道理だろう? 何処からか無限に湧いてくるカネなど有り得ない!」

 つまりそれって……この下層に放り込まれた人たちって……

「出してしまった赤字は身体で支払って貰う――それだけの話さ」

 ライオン丸は事もなげに言い放った。


「地下フロアと地上こことを繋ぐ手段は【コレ】しかない」

 ライオン仮面に紹介されたエレベーターは、ギョッとするほど無骨なシロモノ。

 装飾を剥ぎ取った機能性だけの昇降機、まるで坑道のエレベーター。

「これ…………分かるかい?」

 エレベーターを待つ人が見上げる位置に据えられた、階数表示パネル…………いや?

(桁がおかしい!)

 階数表示なんて二桁もあれば充分過ぎるのに……いったい何桁あるんだ?

 しかもご丁寧に、三桁ごとにカンマで区切られて……

「これ、もしかして……」

 僕らにも「親しみ深い数字」の表記法では?

 通帳でもATMでも請求書や領収書でも商品の値札でも見慣れてる。

 カチャリ。

 そこで不意に電光掲示の数字が減った。

「この数字がゼロを迎えると……エレベーターは動き出す」

 逆に言えば、それまで動かない――【損失補填】が為されるまで、このまま、ということか。

「許されるんですか? こんなことをして?」

 ほぼ監禁じゃないですか!

 ただでさえコンプライアンスを求められる時代に?

「もちろん許されるさ! 彼らの全員から承諾を得てる! 署名捺印入りで!」

 獅子仮面は「読んでみればいい」とでも言わんばかりに紙束を僕へ手渡してきた。

「納得出来ないかい?」

 そりゃそうです! こんな、人を人とも思わぬ扱いとか!

「いやいや、君が義憤に駆られる必要などないのだよ、ミスター高橋ボーダーブレイク

「え?」

「負けた時のことなど、【考えなくてもいい】才能の持ち主ならば」

 いきなり僕のパーソナルスペースへ踏み込んできた獅子仮面、強引に僕の手を握る。

「へ?」

 接客過剰のコンビニ店員みたいに、両掌でしっかりと。

「ミスター高橋ボーダーブレイクくん」

 僕の手には鍵。

 金属と樹脂の感触が高級感を漂わす、大仰な鍵が。

「ここへ君を呼んだのは他でもない――――あたらしい契約を交わそう」

 やっと気がついた。

 さっきライオン仮面が僕へ渡してきた紙束。

 これは自らの正当性を誇示するための物証エビデンスなんかじゃなくて…………僕のために用意されたものだったんだ!

「そこへサインしてくれれば――その鍵は君のものだ」

 気前のいい前払いが好意の印、だなんて誰が考えるものか。

 莫大な成果を求められる、悪魔の契約書に決まってる。理不尽な罰ゲーム込みの!


「我々とボーダーブレイクくんの、輝かしい未来に、乾杯!」

 増えた。

 別の仮面紳士、今度はミノタウロス仮面の紳士が高そうなシャンパンを携えて現れた。

(何が【輝かしい未来】だ!)

 サインしたが最後、僕の人生から自由の文字が消えてしまうのに!

「ようこそ、ミスター高橋ボーダーブレイク、製作委員会は君を歓迎する」

 ミノタウロス仮面紳士が金色のウェルカムドリンクを僕に差し出すが、

「お断りします」

 キッパリと拒絶した。

「なに?」

 当たり前だ。

 そもそも僕は音響監督業など、居座るつもりなどない。

 「鬼界カルデラ」のファーストシーズンを終えてしまえば、そこで、今度こそ御役御免さ。

 極上の紐巫女(錦松さん)が無事一本立ちしてくれれば。最初の一歩を手助けできればいい。

 それ以上、僕が望むものはない。

「相場の倍では不満か?」

「では三倍出しましょう」

 また増えたよ、仮面の紳士。今度はバフォメットマスクの淑女が畳み掛ける。

(何も分かってない、この人たちは!)

 そんな濡れ手に粟の仕事では「徳」が詰めない。

 空になった貯金箱へ詰め込むのは、念の籠もった小銭こそ相応しい。

 「どうだ明るくなつたらう」な泡銭では、付随する「徳」が紙屑に等しい。はず。おそらく。

 「徳」を積むには、それ相応の試練がないと価値が産まれない。たぶん。推測するに。

 これまでも、僕はお金のために細々としたバイトをこなしてきたわけじゃない。

「ならば、どんな条件が欲しいのかね?」

 そういう問題じゃないんだよ。

 根本的に価値観が違う、僕と貴方たちとは全く以て。

 アンタらの価値基準に沿った条件闘争の世界、そんなのクソ食らえだ。

「もう、帰っていいですか?」




 聞き分けのない音響監督見習いが去った後、

 彼(椋丞)が立っていた場所には彼女(現場統括)の姿があった。

「宮居……分かっているな?」

 幹部の意向は絶対。もし逆らえば、出世が絶たれるは必定。

「【 奴 】を懐柔しろ。どんな手を遣ってでもだ」

 それが組織だ――例外などない。

「承りました」



と、いうワケで第二章終了です。

ここまでお付き合い頂けた読者の皆様、本当に感謝感謝です。


できれば、ちょこっと感想なんぞ頂ければ、今後の制作の励みに……なる。確実になる!

@Helvetica_Ikj のツイッターの方でも構いませんので……

何卒……何卒……


次、三章は年内にリリース予定!

書くのは早いが、推敲に異常に時間が掛かるヘルヴェティカさんですが、

次こそは!

サクサクっと推敲を終わらせますよ!


次はいよいよ、椋丞に迫る悪の魔の手が激しさを加え、

音叉の魔術師の素性へと踏み込み、

ヒロインとのラブロマンスが進行する…………予定です!


それでは、また少しの猶予でお別れを。

近々の未来でお会いしましょう!

See you Next time!


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