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届かない想い<<この女子高生の告白は不適切な内容を含んでいる可能性があります>>

リアルとバーチャルの区別がつかなくなった時代。

不適切な内容を含む会話や文章にはリアルタイムでフィルターがかかるようになっていた。

女子高生の乱子は片思いの中学生、悠人に想いを伝えようとするがことごとくフィルターに妨害されてしまう。

乱子「<<この会話は不適切な内容を踏んでいる可能性があります>>」

 はぁ、はぁ、放課後のチャイムが鳴った!

 はぁ、はぁ、悠人(ゆうと)くんとその友達1名が現れた。

 はぁ、はぁ、はぁ、私、乱子(らんこ)は今日こそ悠人くんに想いを――


「悠<<この会話は不適切な内容を含んでいる可能性があります>>」

「うわっ、あのインラン女子高生が現れた。悠人逃げろ!」


 なんで、なんでなの!? またシステムのフィルターに邪魔された!


 悠人くん好き。


 ただこの一言を言えればいいのに!


 お父さんの時代はネットの中でしかこういう規制はなかったって聞いたわ。


 でも今の時代はなんなの!?


 私が何か話すと不適切な内容呼ばわり。おまけに中学生に淫乱女子高生って言われる始末……


「インランってなに?」


 きゃーっ! 淫乱って言葉知らない悠人くんピュア過ぎ! はぁ、はぁ……


「淫<<この会話は不適切な内容を含んでいる可能性があります>>」

「インランってあーいう不適切な女子高生のことだよ」

「不適切なの?」

「だって、システムが不適切って言ってるじゃん」

「でも、毎日優しい目で僕のこと見ているし、雨の日に折りたたみ傘置いていってくれたし」

「それストーカーって言うんだよ!」


 見てくれている! 悠人くん私のこと毎日見てくれている!

 折りたたみ傘を置いたのが私だって気づいてくれてる!


 取り巻き小僧がストーカー呼ばわりするのは屈辱だけど……


 でも、今日はあきらめない!


 だって今日は2月14日!


 この鞄の中に入っている想いを絶対悠人くんに届ける! はぁ、はぁ……


「あ<<この会話は不適切な内容を含んでいる可能性があります>>」


 「あ」しか言ってないじゃないっ! なんなの!


 私が「あの」って声をかけたら「不適切」だって言うの!?


 でも、大丈夫。問題ない。ノートに想いを書いてきたから。


「ヤバいぞ。なんか取り出そうとしてるぞ!? 早く逃げろ!」

「でも、この前折りたたみ傘――」

「今日雨降ってないだろ! どんだけ折りたたみ傘好きなんだよ!」


 バッ


 私は勢いよくノートを開いた!


 そう、どのページでもいい! はぁ、はぁ……


 30ページどのページにも私の……はぁ、はぁ、想いを……はぁ、はぁ、書いたのだから。


 はぁ、はぁ、じゅるり。


<<この画像は不適切な内容を含んでいる可能性があります>>


「なにこれ、モザイクかかってる」

「は<<この会話は不適切な内容を含んでいる可能性があります>>」


 なんなの!? ノートまで不適切なの!? おまけに私が「はぁ?」って言うのさえ不適切な内容だって言うの? そっちが「はぁ?」だよー!!


「行こうよ、ヤバいって。髪染めてるし」


 地毛だよー! この黄金色で小麦畑のような髪の毛のどこが悪いって言うの!?


<<この髪の毛は不適切な内容を含んでいる可能性があります>>


 ぎゃーっ! 髪の毛までフィルターかかったーっ!!


「待ってよ。この人いい人だよ」

「悠人は人を信じすぎるんだよ!」


 そう、悠人くんのピュアなところ……そこに私、乱子は惹かれたのです。

 取り巻き小僧も悠人のピュアさはわかっているのね!


「さっき、見たでしょ?」

「何を?」

「この人の髪、黄金色で小麦畑のように綺麗な色だったよ」


 そうそう! 黄金色で小麦畑のように綺麗な髪なのです!


「だから何? 今はモザイクかかってアフロみたいになって……歩く変質者じゃん」

「そこだよ!」


 どこなの!? 歩く変質者はいい人なの!?


「あんなに美しい髪の毛なのにフィルターがかかった。僕、こんなフィルター信じないよ!」

「……<<この会話は不適切な内容を含んでいる可能性があります>>」



 ありがとう。



 悠人くん……悠人……この想いを届けたい。


「うわっ、またなんか出すぞ」


<<この物体は不適切な内容を含んでいる可能性があります>>


「げっ、モザイクだらけ」


 不適切なチョコ、不適切な想いだっていうの?


 けど、この不適切な気持ちを届けないと私、一生後悔する!


「お、おい! 悠人! やめろよ! そのモザイク触ったら、おまえも不適切な悠人になっちゃうぞ」

「そうなの?」

「来年俺たち受験だろ? 悠人は推薦入学だってできるかもしれない。けど、それ受け取ったら全身モザイクのまま面接受けるんだぞ! そんな不適切な学生絶対落ちるって!」

「う……ん……」


 え? ちょっと、なんで悩んでるの!? さっきいい人って言ったのはどうでもいい人ってこと!?


 うっ……


「げっ、モザイクが流れてる!?」


 え? あれ? 目から涙が……っていうか、涙までモザイクかけるな! このシステム!


「なんか泣きながら笑ってるよ。やっぱヤバいよこの人」

「でも、素敵なひ<<この会話は不適切な内容を含んでいる可能性があります>>」

「おい! 悠人! 何受け取ってんだよ! おまえ将来棒に振る気かよ! 不適切な人間になっちまうんだぞ! あーっもぅ! 知ら<<この会話は不適切な内容を含んでいる可能性があります>>」


<<この小説は不適切な内容を含んでいる可能性があります>>


おしまい

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