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いつものように母と2人で夕飯を済ませたが、当然母には明日の事は黙っていた。
今夜は公園での練習もお休みして部屋で寛いでいると
「今日は珍しく部屋にいるので、具合でも悪いの」と母が心配してくれたが
「大丈夫そんな事はないよ」と、ごましていると
「後で部屋に行く」と南からメールが来た。
やっと欲しいお土産でも決まったのかと「高いお土産は駄目だぞ」と返信すと
「了」と直ぐに返事が来た。
それから、お風呂に入って裸で部屋に戻ってくると南が部屋に来ていたが、俺の裸を見ても顔色はまったく変わらずに、平然としていた。
「平助、アザは治った」と、いつもの口調で裸の俺をじろじろ見ると
「かなり治っているわね。もうお薬を塗らなくていいか。それにしても筋肉が付いたわね」と冗談交じりに優しく診察してくれたが、
「せっかく来たんだけど、この部屋どうにかしてくれない、狭いし、暑いし、2人でいると苦しいわよ。この狭い部屋でいつも彼女とはどうしていたの」
そういえば、彼女とはいつもギュッと一つになっていたので、部屋の狭さを感じなかったのかと思い出してニヤニヤしていると
「何を思い出してニヤニヤしているのよ、このスケベ」と、いつものように罵声を浴びせられた。
「少し我慢してくれ。今度ヒカリが帰ってきたら、隣の部屋が空くのでこの荷物を移すよ」
「彼女また帰ってくるの、じゃ隣の部屋は空けとかなくていいの。またここに住むんでしょ」
「あぁ、帰って来ますよ。次は決まっていないけど俺の家じゃなくて違う所に住む筈だ」
「へぇ、そうなの。やっと地球侵略の基地を作るのかな」と冗談を言って笑っていたが
「でも、彼女もこちらとあちらを行ったり来たりで大変そうね。それで次も仕事なのかしら」
「詳しくは分からないけど、たぶん仕事だ。この2日間見ていて良く分かったけど、彼女は土日が無いほどよく働いているよ。本当に良く働く」
「何だ、私はてっきりお姫様の苦労知らずだと思っていたわ。それに働いている大人の姿を見るとね。何か彼女を見る目が変わったかも」と南が少し彼女に理解を示し出した。
「見る目が変わったって、悪党から正義の味方にでもか」と冗談を言ったが本当は南が少し彼女を理解してくれたのが嬉しかった。
「それはないけど、苦労しているのね。まぁ、それはどうでもいいけど。お土産は本がいいけど大丈夫かしら」
「本ね、たしか魔導に関する本は国外持出禁止だったと思うけど、買う時にでも本屋で訊いてみるよ」
「でぇ、どんな本がご希望かい、あんまり高いの無理はだけど」
「妖怪やモンスターに関するものなら何でもいいのでよろしくね。それと望ちゃんに会ったらこれを渡して」と手紙を俺に手渡したが
「彼女に会える保証はないけど、会ったら渡しておくよ」と了解した。
「それで、どうして急に異世界に行くのよ」と尋ねたので、これまでの詳しい事情を話すと、彼女は大会の賞金に興味を持ったらしく
「結構、賞金がいいのね。来年は私も出ようかしら。アラタさんに頼めば推薦してくれるわよね」とバカな事を俺に訊くが、真面目に答えるのが面倒くさかったので
「よく頼んでおくよ、南なら軽く優勝して10万ポイントをゲットしそうだな。OLさんの10ヶ月分の給料ぐらい貰えるぞ」と笑うと
「あら、いい額ね。大学の入学金と授業料にでも使おうかしら。でもその魔導って何でしょうね。西洋で言う魔法とか、でも少し違うな、妖術の方かな。是非、この目で見てみたいわね。あぁ・・だから私を連れて行って」と真剣に言うので
「じゃ、薬を塗ってくれたお礼に南にこれを見せてあげよう」と、おもちゃの剣と盾を手にして、呼び出し大きくすると
「何なのこれ、急に大きくなって。トッリクはないの、種や仕掛けはないの・・。これがさっき言っていた魔導なの」と非常に驚いていた。そして剣を触りたそうにしていたので、これはおもちゃだし、南はこっちの世界の女性なので掟には反しないので触らせてやると、最初は喜んでいた。
「今度の大会はこれで戦うんだよ。それで魔導を使って色んな技を出して相手を倒すのさ」
「これで、戦うのね」と剣を少し振り回したが、彼女には重過ぎるのか「手が痛い。疲れた。もういい返す」と直ぐに飽きてしまったようだったが、
「これ、何って書いてあるの、見た事もない文字ね」と今度は刻まれた呪文に興味を持ったのか顔を近づけて見ていた。
「その文字は魔導師しか読めないらしいので、俺には分からないよ」
「そうなの、でもこれがその魔導の鍵かもしれないわ」と一字一字メモをしていた。
「でも、これは、おもちゃの聖剣と盾だけど、明日は本物の聖剣で試合さ、俺は今からでもゾクゾクする」と興奮を隠しきれずにいると、俺の手をとって真剣な眼差しで
「ケガだけはしないようにね」と心配してくれたので
「ありがとう、心配させてごめん」と狭い部屋で見詰め合ったが、恋人同士ならここで抱き合う筈だけど、俺と南はそんな事はしなくてもいい間柄だった。
「そうそう、それで、今度はこれをあげるわ。これは、相手の魔導を防ぐのに役立つかもよ。私が記憶を消されないように結界を作るでしょ、その方法で作ってみたの。必ず試合の時は身に付けておいてね」と小袋を俺に手渡して帰って行った。
南が帰った後、少し部屋を掃除していると
「そうか、あのお守りだけが残っていた理由が今やっと分った。きっとあれも南が俺に難が来ないように結界を作る方法で作ったので魔導が効かなかったか」と南の凄さを痛感させられた。
それから、赤いカバンを枕元においていつもより早いけど明日の試合のためベッドで横になると、この1週間の色んな事が思い出された。まだやりきれない事が多くあったが、今更どうしょうも無かった。明日にはまたヒカリに会える事だけを考えて眠りについた。




