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今日も夕飯の時間になってもヒカリが帰ってこなかった。出掛けに彼女は遅くなりますと言っていたけど仕事が仕事なので俺は少し心配していた。これが毎日続くと気が滅入るな。危ない仕事は早めに辞めて欲しいものだ。
それでもちゃんと母には今日も帰りが遅くなるとの連絡があったらしく、ごはんをさっさっと俺によそって食卓に着くと夕飯を食べ出した。
俺は今日も母と2人での静かな夕飯かと少し寂しいかったので、
「いい話があるんだ母さん、秋の都大会への出場が決まった。個人選だけどね」
「えっ凄いじゃないの。個人選でも成績がよければ大学に推薦してもらえるんでしょ」と喜んでくれて、尋ねるので
「もちろんさ、万が一優勝でもしたらね」と母を喜ばしてみたものの、過度の期待をされると後が心配だし、アラタも個人選に出るので都大会での優勝はまず無理だとは念を押して話たが
「それでも、もしもの事ってあるでしょ、優勝目指して頑張ってね」と応戦してくれた。でも、それよりも前に来週に異世界で武道大会がある事は話せなかった。
夕食後は今夜も公園には行かないで、ヒカリの帰りを待つために明かりが灯る駐車場でバットを右手のみで振っていたが、まだまだ力が入らずしっくりこない。
「これじゃ、片手で決めるのは、まだ無理か」そんな事を考えていると今日も勉強会から帰宅した疲れた顔の南とやっぱり会った。
「今日も、こんな所でバットを振っているなんて、本気で剣道をやめて野球でもするの、私は汗臭い道場より甲子園の方が好きだけどね」
「バカを言うなよ。個人選だけど都大会に出場できる事になったので練習しているんだ。それに俺は巨人ファンだ」と偉そうに答えると
「へぇー良かったわね。でも、よくあんた出場できるわね。うちの学園は全国大会出場の常連校なのに、もしかして部員に下剤でも飲ませたの」と疲れた顔が明るくなり冗談を言ってきた。
「おいおい、無茶苦茶な事は言うなよ。これは実力さ」と、たぶん喜んでくれた南に答えた。
「また、お守りでも作ってあげましょう・・。また・・って」と呟きながら
彼女は何かを思い出したのか急に難しい顔になり
「そうそう思い出した。そういえば、あんた確か中学3年生の時に都大会で優勝して全国大会に行ったわよね。そして私がお守りをあげたけど、覚えている」と
「俺が優勝して、全国大会に出ただと、それは本当か」と信じられなかったが
「本当も嘘もないわよ、皆忘れているだけで覚えているのは私ぐらいなものよ。
部屋に帰ってお守りをよく探してみれば。そうそう、あれ徹夜して作ったんだから、大変だったのよ。でも、全国大会が夏休み期間中だったので望ちゃんが帰ってしまって、あんたは蛻の殻で1回戦で簡単に負けてしまったのよ。たぶんその記録も消されていると思うけどね」
そんな話は直ぐには信じられなかったが、それを聞くと、なお更早く記憶を思い出さなくてはいけないと強く思ってしまった。
「それで、日曜日だと言うのに彼女は今日もお出かけですか、お姫様は優雅ですね。それに比べて私は受験勉強で・・」と愚痴を言っていたが
「珍しくお前が愚痴を言うなんて・・、彼女はお出かけと言うよりは、仕事かな。俺達が思っているよりかなり大変らしいぞ、毎日疲れて帰って来るし」
「へぇ、お姫様がお仕事だなんね。それで、こっちの世界で何をやっているの、国との友好とかを図る仕事とかな」
「バカな事を言うなよ、異世界と友好したって意味ないよ。それに彼女の仕事は、俺にも詳しくは話さないけど、警察関係の仕事で今日も捜査だとさ」
「えっ、ヒカリさんは警察官だったの、驚いたわ。彼女はバンパイアなので私はてっきり悪の方だとばかり思っていたのに、人は見かけによらないものね」
「見かけって・・あんなに可愛いのに悪者扱いかよ。彼女を地球侵略者だとでも思っていたのか」と笑っていると彼女が帰って来るのが見えた。




