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今度は彼女を自転車に乗せ小高い公園に着くと自転車を止めて、サクラの時と同じように大きな木の下で手を繋いで並んで街を見下ろしながら
「ごめん、君が居ない間に謝らなければいけない事ができたんだ。
俺は嘘を言うのが嫌いだし、どうせ何時かは君に言わないといけなから」と、
ずーっと悩んでいたが思い切って切り出した。
急に変な事を言い出されたの彼女はキョトンとしていたが
「私に謝るって何を、どうしたの急に、それで、何を」
「俺もまだよく思い出せないけど、この場所で2年前に付き合っていた彼女にプロポーズしたらしい」とハッキリと言うと、彼女は握っている手に力が入ったが、平静を装うっていた。
「それで、その彼女とはどうなったの」
「どうなったって俺にも分からない。ただ、その時の彼女の返事はこちらこそ、よろしくって」って答えたらしい。
「らしいって・・。じゃ、それでいいじゃない。平助のいい思い出になって。
でも、次のプロポーズはちゃんと私にしてよね。
そして何時までも絶対に覚えておいて下さいよ」と彼女は複雑な感じで笑っていたが、あの日の事は悲しいけど俺の思い出にもなっていなかったが、彼女に本当の事を話せて何かすっきりした。
それからもう用事が済んだのでどこにも寄らずに帰ったが、彼女は家に着いても女子高生の姿には戻らずに堂々と家の中に入ろうとするので
「おいおい、母さんがいたらどうするんだ」と注意しても
「大丈夫よ、おばさんは外出中だから」と安心していた。
家に入ると彼女の言うとおり母は何処かに出かけていたが、
ヒカリは何を考えているのだろうか、もし母さんがいたら何と弁解すればいいんだと俺はビクビクだった。
母はちゃんと2人分のお昼を用意してくれていたので、
「午後から何をしようか、どこに遊びに行こうか」と、仲良く食べていると珍しくヒカリのスマホに電話がかってきた。
彼女は発信先を確認すると直ぐに席を外して隣の部屋で電話を取り、俺に聞かれたらマズイのか誰かとヒソヒソと何かを話してまた席に戻ってくると、さっきまでとは異なり異常に暗い顔だった。
「ごめん、平ちゃん、急用が出来たので今日と明日は付き合えなくなった」と残念そうにして、またお昼を食べ出したが余り食が進まないようだったので、
「どうしたの急に、何か事件でも起きたの」と尋ねると
「今度の武道大会に出場予定の勇者が何者かに襲われたみたいなの。それで丁度こっちの世界にいる私に急遽事情聴取と現場検証をしてこいと命令が出たの」とぼやいた。
「その武道大会って、今度首都である勇者武道大会かな」と、その答えを聞いて俺は思わず口に出してしまった。
「あら、良く知っているのね。流石に一応勇者様だけの事はあるのね。
もしかして賞金が出るので平ちゃんにも興味があるのかな。
でも、今の平ちゃんの実力じゃちょっと無理かな。
もっと強くなっていつか出場できるといいね。だってその賞金が凄いんだから」と少し俺をバカにしたようにクスククスと笑っていたが
「俺はそんな大会にはちーっとも興味はないけど、何故か俺が出場者の次点になっている大会だよ」と答えると、彼女は急に笑いを止めて目を光らせて興味を示した。
「ケガをした勇者もいるから、もしかしたら平ちゃんが出場できるかもよ」と本当は喜んではいけないのに、嬉しそうだったので
「俺はまだ実力がないから出る気はないからさ、いくら喜んでも駄目だよ」と彼女の言葉を借りて答えると
「そうかなこの頃結構腕を上げたと思うけど、それは残念ですね。勝ったら賞金で指輪を買ってもらえるかなと思ったけど、無理みたいね」と、わざと左手を見つめて悲しそうにしていた。
そっか、勇者が襲われたのか、それで仕事が入ったって訳かと考えていたら、昨日の事を思い出した。
「そう言えば、俺も昨夜公園で2人組の男に襲われたけど、何か関係あるかな」と話すと、彼女の顔色が変わり
「バカね、何故それを早く言わないの。どこも怪我はしていない? あっ、そうそう、それも報告しなくちゃ」と、また席を外して急いで何処かに連絡を取っていた。