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奥手な勇者の恋の相手はモンスター  作者: ゴーヤウリウリ
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3-1-2

3-1-2 

 2人の立会いを熱心に見ていた楓から「あら、引っかかった」と声が出た。

楓は俺のおかしな行動に気付いていたらしいが、アラタは妙に真剣すぎるので逆に気付かなかった。

練習では胴着を着けているのでトンファーが脇腹に入ってもケガはしないのだが、これは、実戦では役に立ちそうだ。

「トンファーにそんな使い方もあるなんて先に教えろよ」と奴は苦い顔をしたが、

「盾ではこんな攻撃はできないよな。でも敵に手の内を明かすバカはいないよ」と俺は勝ち誇ったが、思った通り次からはその手はもう通じなかった。こんな簡単な引っ掛けは初対戦の者にしか使えそうもないか、直ぐにばれそうだなと思った。


 それでも、アラタもカンフーましてやトンファーの使い手とは戦ったことがなく、俺の攻守の転換の早さには躊躇する場面もあり、何本かは面や胴の上からとはいえ、きれにヒットしたものもあった。

その後も稽古を続けたが、俺はいわば盾持ちの二刀流に対してアラタは剣一本、その装備の差は歴然である筈だが、奴はそれでも俺のトンファーの攻撃に慣れるといつものように俺を上回る強さだった。


「どうだ、これなら盾よりは軽いし動きやすいし、十分使えるんじゃないか」とアラタに確認すると

「あぁ、これなら十分に使える。それにしても、トンファーの使い方が上手いな、お前はカンフーの経験があるのか」と不思議そうにしていたので

「あぁ、子供の頃少しだけブルースリーに教わった」と冗談を言ったが、

「あの有名なブルースリーに教わったのか、それは凄い」とアラタはそれを信じているようだ。剣術のことしか知らない奴は冗談も通じなと俺と楓は笑った。


 立会いが続いたので俺とアラタが少し休憩をしていると、楓が近づいてきて

「平助、お願い今度は私と稽古して下さい」と頼むので、アラタに許可を貰って楓とも立会いをやってみたが、彼女にはアタラとは違いトンファーの攻撃が面白いように決まるので、頼んだ楓の方から音をあげてしまった。

 楓はトンファーとの対戦は初めてだったのか俺の攻守の転換の早さには付いていけなかったみたいだった。すると今度は興味深々に、

「トンファーを見せて下さい」と頼むので手渡すと、両手に取ってじっくり見て軽く叩いて納得したように

「この呪文は、魔導師が彫ったものですね。そしてこの金属は、確かレアメタル。そう簡単には手に入らない。さすがに王族は違いますね」とヒカリの素性を知っているようだった。


 それから少し休憩を取り、練習を再開する頃には、朝ごはんを食べたヒカリが、母との雑談を終えて、家で一人は寂しかったのだろうか珍しく練習を見学しにやって来くると直ぐに俺に抱きつき

「平助、私に黙って一人で行くなんて酷い、酷い」と2人の前でも構わずに駄々をこねていると、こんな姿を見たことがなかったアラタは頭を抱えていた。

 そんな雰囲気を察してか、見ているだけではつまらないと思ったのか、

「それじゃ、私も朝ごはんも食べたし、少し運動でもしょうかな」とヒカリは剣道場の奥に引き込むと、今度は大人の姿に変身して両手に木のトンファーを持って現れた。


「じゃ、平助、お手合わせよろしい」と俺を指名したので、初めて彼女と立会いをしてみると、以前の公園での練習とは違い彼女が本気を出したのか、俺の竹刀の攻撃は全て体を動かすだけで簡単に交わされ、トンファーの攻撃も俺の師匠でもあるので簡単に受け止められてしまった。

 彼女からは俺がトンファーで受け易いような攻撃しかないのだが、それが続くと俺はゼイゼイと息が上がってきた。それでも彼女は俺と立会えて嬉しいのかニコニコしていた。俺との立会いは彼女にとっては単なる準備体操のようなものだった。

この時俺はアラタや楓とは全然違いすぎる彼女の格段の強さを痛感した。



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